表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/201

案件2 Mad Dog 19

 龍太郎は、久しぶりに気兼ねなく話ができる相手を見つけたので嬉しいのか、聞いてもいないことを話し始めた。

「どうして長谷部はせべ先生が、Mさんって呼ばれてるか知ってる。あのさ授業中……」

 東大寺とうだいじが手招きしている為、愛美まなみは龍太郎の言葉を遮った。のんびりするのは事件解決してからだ。

「ごめん。ちょっと用事あるから」

 龍太郎は少し寂しそうな顔をしたが、駆け去っていた愛美を眩しそうに見ていた。

 愛美は、クラス一の熱愛カップルと評判の彼氏の東大寺と一緒に、親密そうに歩いていく。

「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやら」

 龍太郎はおどけたように呟いて、職員室の扉をノックした。


「前の事件が終わってからもう一週間以上経つ。そろそろやばいで。気ィつけやな。鬼ババが帰り支度しとるから俺は追うけど、愛美ちゃんは石塚だけでなく長谷部にも注意しといてな」

 深刻な顔をして、東大寺は愛美に囁いた。

 二人は本格的な捜査に乗り出すと言いながら、何一つ手がかりを掴んでいない。

 長谷部も石塚もD組担任の福永香織も生徒達の評判は芳しくなく、仲間の教師達とも親しく付き合っていない為、聞き出せたことは殆どなかった。

「最終的には長谷部の方を追うわ。犬好きに悪い人はいないんでしょ?」

 愛美がそう言うと、東大寺は曖昧に頷いて無理はしないようにと言い置いて歩いていった。愛美が後を追って靴箱に辿り着いた時には、東大寺の姿はなかった。

 愛美は、さてどうしようかと立ち止まった。テスト期間ということもあって、校舎には生徒の姿はない。

 超能力者の東大寺ならいざ知らず、愛美が見張りなんかしていれば余計目立ちそうだ。

 長谷部か石塚か。どちらも怪しいと言えば怪しい。

 下駄箱の前でぼんやりと佇んでいた愛美の腕を、突然誰かが掴んだのはその時だった。

「やっぱり君だったんだ。俺だよ。俺、萩原はぎわら武史たけし、週刊Nの」

 二十代半ばに見える男が、コートを小脇に抱えて来客用スリッパを履いて突っ立っていた。愛美の腕を握る指に力がこもっている。

 絶対に逃がすまいと思っているようだ。約一ケ月以上ぶりの対面になるだろうか。

 萩原武史。新聞記者だと自分では名乗ったが、週刊誌の記者だったらしい。

 週刊N。愛美も名前だけは知っている。三流の、芸能人のスキャンダル雑誌だ。

「どうして君が鷹宮高校にいるんだ?」

 どうしてお前が、ここにいるのだとこっち(まなみ)は聞きたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ