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案件1 そして誰かがいなくなる 6

「まあ、そう言う趣味がありましたの」

 女は絶句すると、そそくさと部屋を出て行った。途端、綾瀬は愛美まなみから身体を離した。女を遠ざける口実に、愛美はいいように利用されたらしい。

「そんなことばっかりしていると、そのうち変な噂が立つわよ。相手が私だなんて思われるのは癪だわ。私はあなたみたいなオジサンに、興味ありませんからね」

 今度は綾瀬に向かって、舌を思いきり突き出してやった。

 綾瀬だったら構わないと思っていることは、おくびにも出さない。どうせ向こうは冗談のつもりなのだ。

「今日はやけに手厳しいな。どうせ事実じゃないんだから、大目に見てくれ」

 綾瀬はそう言って、それからと続けた。

「これ以上、行方不明者を出さないように、迅速に捜査に当たれ」

 綾瀬は行方不明者よりも、高橋芽久(めぐ)の母親の訪問が煩わしくて発破をかけているような節があると、愛美は睨んでいる。

 それにしてもいじめ云々の話は別として、朋子ともこ万里江まりえの二人が、高橋芽久の失踪に何らかの関わりがあるかも知れないという発見は、特筆すべきことだ。

 どんな小さな出来事も見逃さないのが、探偵小説でのセオリーだ。別に愛美は探偵ではないし、今度の事件も一般的な感覚からいっての失踪事件とはひと味違う。


「俺さ、この前裏庭でおかしな物見つけたんだぜ」

 愛美は、反射的にその言葉を言った男子の方を見ていた。東大寺とうだいじの混じっているグループの中の一人だ。

 へえと、気のないような返事を返す東大寺の目は真剣で、口元だけがおざなりな笑顔を作っている。

 愛美も東大寺も、事件に関わるどんな些細な出来事も見逃すまいと、アンテナを立てている。愛美はバンリとトモとの会話を切り上げると、さりげなく次の授業の用意を始めた。

 耳だけはしっかりと、東大寺達のグループに向けられている。

「裏庭って言うか、あれは開発途上で捨てられた林って感じじゃんか」

「何しに行ったのかな、ノブオ君。女の子を連れ込んだとか」

 菊池信雄。確かそれが、裏庭でおかしな物を見たと言った男子の名前だったと愛美は記憶をふり絞る。線の細い、大人しそうな感じの子だ。

 信雄は、馬鹿野郎と顔をしかめて見せる。

「こいつにそんな甲斐性ないって。それより、何を見たんや」

 東大寺が、完全にその場を仕切っている。早く核心に近付かないかと、イライラしているのが愛美にも伝わる。

「祠って言うのかな。小さいのがあったんだけど、それが物の見事に壊されてて、何か怖くなって逃げ出してきたんだよ」

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