表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/201

案件2 Mad Dog 12

「てっとりばやく、全員に聞いてみたらええんや」

 東大寺とうだいじはコップの水を飲み干すと、手を打ち鳴らして勢いこんでそう提案した。

(全員に聞くって……?)

 愛美まなみの疑念をよそに、東大寺の探索は放課後を待って開始された。一番目のターゲットに選ばれたのは、福永香織と言って愛美達のクラスの担任だった。

 担当は書道で、愛美達は直接教わる機会はない。

 三十代の後半らしいが、いまだに独身を通している。感情的になりやすいので、恋人には逃げられたのだろうと、生徒達の間では専らの評判だ。

 掃除の監督をしている女性教員に東大寺は近付くと、いきなり。

「先生、犬飼わへん?」と聞いた。

 突然何を言い出すのかと、愛美の方がハラハラしてしまう。

「あのさ。うちでうてる犬がさぁ、子供産んだんで貰い手探してるんやけど」

 東大寺は勝手な作り話を、ペラペラとまくしたてる。

 福永教諭は、東大寺を凝視している。その小柄な身体が、小刻みに震えていた。教師の顔が青冷めていくのを見て、愛美は東大寺の制服の裾を掴んで止めさせようとした。

「血統書つきの犬で、親の名前はクラディスって言ってデカいだけで邪魔な……」

(何を言っているのか)

 愛美は一瞬呆れたが、女教師はついに感情を爆発させた。福永は教卓を力任せに叩くと、癇癪を起こす。

 掃除をしていた生徒達が驚いてこちらを見、東大寺もびっくりしたらしく後退さった。

「犬ですって。誰が犬なんか飼うもんですか。犬なんか犬なんか……」

 後は言葉にならないらしく、福永は何度も犬なんかと繰り返した。

「あかんかったらええんです」と東大寺は言うと、ヒステリックに叫んでいる福永を置いて、愛美を教室の外に連れ出した。

「なんや、もう決まったようなもんやな」

「え? 心を読んだ? 自白した?」

「ううん。感情が爆発して、マズい。バラバラにして読み取れへん。慌てて遮断したけど」

 廊下にまで、声が聞こえている。廊下を歩いていく生徒達も何事かと、1-Dの教室を覗いていくのだ。

 流石に愛美も驚いた。犬の話をしただけであんなに反応を示すなんて、一体どういうことだろう?

 犬という単語に敏感になっていることは確かだ。ただの犬嫌いとも思えないが、そんな簡単に決めるのはよくないだろう。

「でもそれじゃあ、証拠とは言えないわ。犬が凄く嫌いなだけかも知れない。あの人、癇癪持ちだし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ