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案件1 そして誰かがいなくなる 40

 万里江まりえは精密検査のために一日入院しただけで、二日後から学校へと登校しているが、行方不明の期間が長かった三年の先輩や生徒指導の樋口や、流産した倉持先生は当分入院が必要なようだ。

 芽久めぐも三日前まで大事をとって入院していたが、今日から登校してきたのだ。

 

 通学路を、数人のグループを作って歩いていく学生の中に混じりながら、万里江達は喫茶店の前で足を止めた。芽久は緊張がピークに達したのか、青い顔をしている。

 朋子ともこは心配そうな顔をして芽久を見ているが、一旦決めたことはてこでもやり遂げる芽久の頑固な一面を知っていて、口を出さずにいる。

 

 事件の後、芽久は変わった。強くなったと思う。あの事件の時、何かあったのだろうか。

 しかし、仲のよい朋子や万里江でさえ、それを聞き出せずにいた。

 

 ちょうど会計を済ませて、喫茶店から数人の少女が出てきた。落ち着いた雰囲気と、ファストフードと違う少し高めの値段から、通学路にあるにも関わらず学生に敬遠されている店だ。

 だからこそ邪魔が入らないと踏んで、今日の為にセッティングした場所だった。

「これから家にこない? 新しいDVD、買ってもらったんだ」

 看板の横に立つ万里江達を意識しながら、少女達は声を潜めるようにして通り過ぎていく。

「ごめん私パス。用事あるから」

 黒いコートのポニーテールの少女は万里江達に気付くと、少し笑ったようだった。万里江は何かが引っ掛かったような気がしたが、それは次の台詞でよけいに深まった。

「彼氏とデートでしょう? 東大寺とうだいじ君だっけ。今度紹介してよね」

 東大寺……? 万里江が思わず朋子を見ると、朋子も万里江を見ていた。

「だから、東大寺さんは関係ないって言ってるでしょう」

 四人の少女達は楽しげに笑いあって、駅の方に歩いていく。

「あの子・・・。どこかで見たことある」

 芽久は、その少女のうちの一人の後ろ姿を指差した。髪をポニーテールにした、あの可愛い子だ。

 朋子はそれを一蔑しただけで、鼻を鳴らして顔を背けた。

「うちの学校の一年だもん。見たことぐらいあって当然だよ」

 興味のないふりをしているが、朋子もその少女のことを知っている気がするらしく、往生際悪く盗み見している。それは万里江も同じだった。

 どこかで会ったような気がするのだが、どこでだったか思い出せない。

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