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案件1 そして誰かがいなくなる 4

「でもさ、マスコミが嗅ぎ回ってるよ」

 バンリはまだ未練があるらしく唇を尖らせたが、朋子ともこが言い含めるようにその話題から話を逸らさせる。

 マスコミが嗅ぎ回っているとは愛美まなみは初耳だし、解せない。マスコミを黙らせるのは綾瀬の仕事だし、優秀なハッカーである巴和馬ともえかずまのお陰で警察の捜査状況は筒抜けだ。

 愛美と東大寺とうだいじは警察の動向を窺いつつ、任務を完遂させるだけでいい。マスコミは、綾瀬が何とかするだろう。

「ただの噂だってば。それよりさ、近藤さんも今度一緒に放課後遊びに行かない? ケーキのおいしい店、見つけたんだ」

 愛美はその言葉に、すかさずマナでいいよと言った。仕事だと割り切っていながらも、学校生活を楽しもうとする余裕が、まだ愛美にはあった。

 朋子は少し驚いた顔をしたが、OKと言ってトモでいいと笑ってくれた。あと、敬語はやめて欲しいと。

芽久めぐが来ないの、そしたら私らの所為なのかな」

 ポツリと言ったバンリの言葉を、トモは語気を強めて激しく責めた。

「バンリ。やめてよ。関係ないって言ってるでしょ」

 高橋芽久。

 二年C組で不登校児と言うことにされているが、実際は校内で行方不明になった内の一人だ。

 警察は後手後手になり過ぎて、事件を食い止めるには何の役にも立たない。営利目的を理由にマスコミを押さえ、無駄な捜査に勤しんでいる。

 行方不明者には、接点はない。

 ただ緑ケ丘高校の関係者であり、校内で消えたというのが、その十人を繋ぐ接点と言えば接点だった。

 警察が捜査に乗り出したのは一ケ月前、その時既に六人の生徒が行方不明になっていた。警察の捜査を嘲笑うかのように、その後も失踪事件は続いている。

 警察の手腕に不安を覚えた高橋芽久の親が、藁をも掴む思いで綾瀬の元に駆け込んできた。それが今度の件にSGAが関わるきっかけだ。

 愛美が林万里江まりえと落合朋子に近付いたのは、二人が高橋芽久の親友だからに他ならない。芽久の親は、その二人を親友だとは認めていないようだったが。


「芽久がいなくなったのは、いじめが原因ではないかと思うんです」

 派手なスーツに身を包んだ四十過ぎの女は、ブランド物のバッグからハンカチを取り出して目尻に当てた。一見して愛美は、自分の母親だったら嫌なタイプだと思う。

 強い香水の匂いが、鼻をつく。

 愛美はソファに座る女の前と、デスクに着いた綾瀬の元に飲み物を運びながら、女の視線がやけに愛美の身体にまとわりつくのを気味悪く思っていた。

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