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案件1 そして誰かがいなくなる 29

 丸い、手の平に乗るほどの小さな鏡。

 鏡面はすっかり錆ついて、何も映すことはできないだろう。裏面には、動物の絵のような、文字のようなものが、何重もの円になって描かれている。

 

 東大寺とうだいじは、閉じていた目を開けた。手の平には、今の今まで何か載っていたような感触が残っている。

 東大寺はそのまま、意識を集中させた。

 祠に当たったのはバレーボール。たぶん昼休み、裏庭でバレーをしていた女子の仕業だろう。

 それから暫くして、誰かが銅鏡を持ち出した。今銅鏡が置かれているのは・・・。

「分かった、校長室や」

 校長室は、職員室からも近い。案外銅鏡は、愛美がもう手に入れているかもしれなかった。

 それでも東大寺は、自分の能力に満足を覚えた。

「どこ行くのよ。一体何をやってるわけ?」

 東大寺はその声に、朋子(ともこ〕と信雄がいたことを思い出した。

 

 危ないところだった。呼び止められなければ、東大寺は彼らを置いて走って行っただろう。

 

 面倒を見なくてはならない相手が、一人から二人になった。更に面倒なことに、落合朋子は東大寺にこの事件の説明を求めている。 

 きちんとした説明を与えるまでは、てこでも東大寺を離さないだろう。

「緑ケ丘高校で十一人もの人間が行方不明になった事の原因は、この祠に安置されとった銅鏡に封じ込められていた化け物が甦ったことに端を発する。鏡の中にその化け物は潜んでいて、自分が自由になる為に、十二人の生け贄を必要としていた。その銅鏡を見つけ出して、再び化け物を封じ込め、鏡の中に囚われた奴らを助ける。アンダスタン?」

 分かるかと言われても、化け物だの生け贄だの言われて、普通の感性を持つ人間に納得できる筈もない。

 しかし東大寺以外に、この事件について解答を与えてくれる人間はいないのだ――いや、一人いる。近藤愛美(まなみ)だ。

「今のは俺なりの解釈による脚本や。詳しいことは愛美ちゃんに聞いたって。それよりも今大事なんは、行方不明になっとる奴らを助けることや」

 まだ朋子にはよく分からない。

「じゃあ、それと菊池がどう関係あるわけ。菊池がこの祠を壊したの?」

「本人が違う言うとるやろ」

 東大寺が、すかさず否定した。

 信雄は、妙に分別臭い顔をする東大寺は初めて見るなと思い、いつから自分は東大寺と友達だったのかと疑問に思った。

 

 思い出せない。

 

 信雄は国語の教科書に載っていた座敷童子の話を、思い出した。ふと気付くと側にいて、誰もそれを不思議だとは思わないが、誰もそれが誰だか分からない。

 東大寺は一体、何者なのだろう。

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