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案件1 そして誰かがいなくなる 23

「それはこっちの台詞と言いたいけど、林さん達を捜しに来たんでしょ」

 ごく自然に言った愛美まなみの言葉に、落合朋子ともこは驚いて目を見開いた。昨日の今日の出来事なのに、どうして林万里江まりえの失踪を知っているのか訝っているのだ。

「今ので、奴が鏡の中にいることが分かってよかったわ。生徒達もみんな、鏡の中に閉じ込められている筈よ。何としてでも無事に助けださなきゃ」

 愛美は、東大寺とうだいじに頷いて見せる。

 

 愛美は、寝坊しかけた東大寺を無理やり起こして、学校まで連れきたのだ。

 捜査を諦めて帰る警官達をやり過ごして、二人は早朝の学校へと潜り込んだ。朋子のやり方と大差はない。

「あなた・・・達、何者なの?」

 朋子が、もっともな疑問を口にした。

「セントガーディアンズアソシエーション。略してSGAのメンバー。揉め事の解決屋とでも思ったって」

 東大寺がいつも通り、お気楽極楽に言う言葉を尻目に、愛美はソッと踊り場の大きな姿見に指を触れさせた。

 東大寺は愛美の動作に一瞬が緊張したが、こつんと爪があたる硬質な音だけが残され、鏡はあくまでただの鏡だった。

 

 水面のように波打っていたなど、到底思えない。

「あたし、鏡の中の万里江の姿を見たし、助けを呼ぶ声も聞いたのよ。芽久めぐや万里江は鏡の中にいるの? あなた達何を知っているの。誰が何の為にこんなことをしてるのよ」

 朋子は助けられた恩も忘れて、近藤愛美の胸倉を掴んで揺さぶった。朋子の方が背が高い分、見下ろすような角度になる。

 東大寺が間に割って入ろうとしたが、愛美は朋子のネクタイを掴んで自分の顔の方に引き寄せた。

「十二番目の被害者になり損ねたのを、感謝しなさい。さっき使ったことばは、呪術大全という本に載っていたものの一部で思わず口から出たけど、本当に効くのか分からなかったんだから。一歩間違えればあなたは鏡の中に引きずり込まれて、あの世か何かでお友達と再会することになったのよ」

 朋子の脳裏に、つい今仕方鏡に吸い込まれそうになった時の恐怖が甦る。朋子は青冷めた顔で、掴んでいた愛美の襟を放した。

 

 愛美は厳しい表情を解くと、あなたが無事でよかったと優しい微笑を浮かべた。可愛くて大人しいだけと思っていた転校生の、思いがけない素顔に朋子は興味を覚えた。

「そろそろ本格的に、仕事にとりかかろうか。一体何をするつもりなん?」

 愛美は、銅鏡を探し出すと答えた。

 東大寺の脳裏に、愛美が視た日本史の教科書の最初の方で出てくるような銅鏡が思い起こされる。あの祠の中に納められていたであろう物だ。

 祠を壊した犯人か他の誰かは分からないが、銅鏡を持ち出したに違いない。

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