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案件1 そして誰かがいなくなる 20

 万里江まりえがそっちに行っていないかと、おどおどとした声で問われ、朋子ともこは嫌な予感がした。万里江と朋子の二人は、学校帰りにお互いの家に寄って二時間ぐらい時間を潰したりすることがよくあった。

 雑誌を読んだり音楽を聞いたり、お菓子を食べながらお喋りしたり。

 しかし、その日は万里江は美術部があったので教室で別れたきり、朋子は一人で家に帰って見たくもないテレビを眺めていた。

 朋子の両親は共働きで、帰りはいつも遅い。大学生の姉もバイトをしていて、朋子は夕方から夜にかけて大抵いつも一人だ。中学の頃はそれが嫌で夜に出掛けていたが、それが好きだった訳でもないから、高校入学をきっかけに止めた。

 だからその電話を取ったのも、朋子自身だった。

 来ていないと言うと、万里江の母親は万里江がどこにいるか心当りはないかと重ねて聞いてきた。答えは知らないだ。弱小美術部の活動は、三時半頃から始まって、せいぜい一時間で終わってしまう筈だ。

 当然五時過ぎには、家に戻っているだろう。

 朋子はできるだけ平静を装って、万里江がどうかしたのかと聞いた。万里江の母親は、それがと言ったきりで口を噤んでしまう。朋子の家とは違って、万里江の母親は専業主婦だ。

 万里江には、年子の兄と小学生の弟がいる。万里江は紅一点な分、両親は万里江を一番可愛がっていた。 朋子が不安を隠しきれず、万里江の母親にどうしたのかと重ねて聞いたところ、美術部の顧問から電話があったのだと話してくれた。

 部活の最中、万里江がいなくなったというのだ。鞄もコートもそのままで、万里江の姿だけが忽然と消えてしまったが、家に帰っているだろうかと・・・。

 顧問は緑ケ丘高校での連続失踪事件を頭に思い描いているのか、半ば諦めているような口調だったようだ。


 万里江が消えた。

 

 朋子の中に、この学校は呪われていると言った万里江の言葉が甦る。

 朋子は現実主義だ。呪いも幽霊もUFOも、超常現象と名のつくものは全て嘘っぱちだと思っている。

 

 芽久めぐは不登校だと言いきった担任の目が、何かを隠しているかのように怯えていたことを朋子は忘れた訳ではない。訪ねて行った朋子を煙たく思っているだけでなく、必死で追い返した芽久の母親も、何かを隠そうとしているようだった。

 

 芽久が消えて、万里江も消えた。

 

 新聞記者を名乗ったおかしな男は、祠がどうとか、何人もの生徒に聞いて回っていた。そう言えば、クラスの誰かが祠の話をしていたんじゃなかったっけ。

 確か菊池信雄・・・朋子はそこまで考えて、怒ったように口をへの字に曲げると、その考えを頭の片隅に追いやった。

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