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案件4 きみにあいたい 45

 綾瀬の所有するマンションは、名前だけ見ればパークヒルマンションと、一見ごく平凡そうだが、その実一般人には縁のない億ションというやつだ。

 一等地に建っていて、土地だけでもかなりのものだろう。

 黒地に金の飾り文字の看板を見る度に、成金趣味だと愛美はいつも思う。

 

 愛美はマンションの植え込み横の、細い路地へと回った。

 目立たない所に専用エレベーターがあり、マンションの守衛のいる正面玄関を通らずに綾瀬の住む七階へと直行できる。

 金のかかった内装といい、自分が場違いな場所にいるような気分になる。愛美は、綾瀬の部屋のソファに落ち着くと、さっそく用件を切り出した。

 綾瀬の足元で寝そべっている犬のクラディスは、相変わらずツンと澄ましている。何やら高慢なお嬢様然としていて、そこが気に食わなくもあり、可愛くもあった。

 綾瀬と巴が二人して甘やかすので、我が侭ぶりに磨きがかかるのだ。

「遥ちゃんが、命を狙われているって? それはまたどういうことだ」

 綾瀬はまた、サングラスを替えたらしい。

 いつものようにブランド物のスーツを綾瀬はさりげなく着こなしているが、これを世の男性が着たら嫌味などころか似合わないだろう。

 東大寺とうだいじが嫌がっているのを承知で、わざと楽しむかのように綾瀬は彼を遥ちゃんと呼ぶ。東大寺に嫌われる訳だ。

「今、お二人は白藤商業の件に関わっているんですよね。仕事で何かあったのですか?」

 紫苑が、紅茶とスコーンを愛美の前に置きながら聞いた。

 紫苑と会うのは数日ぶりだ。ようやく仕事に方がついたとかで、事後報告に綾瀬の元を訪れていたのだ。

 白藤の名前を聞いた途端、愛美は不機嫌な顔になる。今のところ進展が全くなしという、悲惨な情況なのだ。

 愛美も東大寺も、この仕事は長引きそうだと覚悟したところだった。

「仕事の方はまだ、めどもたっていない状況で、ってそれはどうでもいいんです」

 ちょっとイラついてる分、言葉使いも乱暴になる。

 紫苑にあたっても、仕方がない。紫苑が優しいのでつい甘えてしまう。これではいけない。

 愛美が済みませんと謝ると、紫苑はにっこりと微笑んで詳しい話を聞きたがった。

 愛美は、自分が知っている範囲での、東大寺の身に降りかかった災難を話して聞かせる。最後に愛美は溜め息を吐いて話を結んだ。

「東大寺さんだから、助かってるようなものだわ。本人が言いたがらないことを、他人から聞き出すなんて、泥棒みたいで心苦しいけど」

「よく分かっているじゃないか」

 綾瀬の即答に、愛美がむかっ腹を立てたところに、綾瀬が再び。

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