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案件1 そして誰かがいなくなる 17

 萩原が少女に語った宝云々の話は、嘘だ。十二の祠は、十三番目の祠を守る結界だ。神隠しが再び起こり始めたのは、十二の祠があるからだ。

 あの少女もまた、真実に辿り着いた者の一人だ。ただの女子高生がなぜ、祠の謎に肉薄できるのか。

 名前を聞いておけば良かったと、萩原はいたく後悔した。せめて学年だけでも知りたかったが、当分緑ケ丘高校に張りついているつもりなので、会える可能性は高い。

 萩原は伝票を掴んで立ち上がると、財布を出しながらレジに向かった。領収書を切ってもらう。

 たかが千円前後の飲食代でケチ臭いと思われるかもしれないが、何せ萩原の追いかけている事件は毎回金にならず、その分家計は圧迫されていた。

 デート代が割り勘どころか奢ってもらうこともしばしばなので、そのうち恋人には見捨てられるかもしれない。

「間抜けかどうかは、今度会った時に分かるさ」

 萩原はマスコミ特有の粘着質を見せて、ニヤリと笑った。

  *

 その電話を取ったのは、案の定紫苑(しおん)だった。

 東大寺とうだいじに遅くならないようにと言ったにも関わらず、愛美まなみが家に帰ってきた時には夜の八時を回っていた。

 東大寺は空腹と戦いながら、愛美の帰りが遅いのを心配したり、食事が冷えるさまをやきもきして眺めていた。

 

 その時の電話は不吉な響きで、東大寺と紫苑の胸を鷲掴みにした。

 電話は言葉少なに頷く紫苑の手から、東大寺へと回された。東大寺は息を潜めるようにして、電話の向こうに「はい」と答えた。

 綾瀬のいつもよりか沈んだ声が、東大寺の鼓膜を震わせる。

「緑ケ丘高校の件だが、今警察の方に林万里江まりえの両親が娘の捜索願いを出した。十一人目の被害者が出たと愛美にも伝えておけ」

 その愛美がまだ帰ってきていないのだと東大寺が言う前に、綾瀬からの電話は切れた。まるで、いつもの東大寺への当て付けのようだ。


 それから暫くして現れた愛美は、紫苑と東大寺にごめんなさいと何度も謝った。

 長時間冬の寒空の下にいたわりには、身体も冷えきっていなかったし、頬は薔薇色だった。愛美は暖房の利いた部屋で、暑いと言いながらコートとマフラーを外している。

「ごめんなさい。まさかこんなに時間がかかるなんて思わなくって。東大寺さん、部活でお腹空いてるんでしょう。先に食事にしてくれてよかったのに」

 遅くなるなら、電話の一本ぐらい入れてくれてもいいのにという紫苑の非難に、愛美は更に謝った。

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