案件4 きみにあいたい 37
夕食に、菓子パンにカップラーメンばかりの萩原の食生活とは、比べものにならない。
夕飯のメニューは何だろう。あの可愛い彼女が、作っているのだろうか。羨ましい限りだ。
あと、ポテトチップスなどのスナック菓子の類も買い込んである。規制する役割を果たす大人のいない、気ままな暮らしということだろう。
東大寺少年は、別に住む家があるようだが、少し前からこのマンションに転がり込んでいる。
高校生の男女が一つ屋根の下で暮らしているなんて、どうかとは思う。不純異性交友なんて今時流行らないことは言わないつもりだが、かなり羨ましい……ではなくて、問題はないのだろうか。
ただ完全な二人っきりという訳ではなくて、人の出入りがある。どうやら、その405号室をSGAのメンバーが拠点としているようだ。
数日間張り込んだ結果、ハーフらしいモデルのような美型と、これも日本人離れした190越えの長身の、やくざか何かのような目付きの鋭い男の二人が、それと分かった。
元事件記者としての本能が、その強もての黒スーツの男とお近付きになるのを拒んでいる。
つい先日、マンションから出てきた男と鉢合わせた時睨まれて以来、姿を見かけていないので安心なのだが、それよりも今は、
「東大寺遥君だよね」
俯いていた少年が顔を上げて、萩原の前で足を止めた。どうもと言うように、東大寺は首をひょこっと前に突き出した。
「週刊Nの記者、萩原武史さんか」
萩原が彼らを知っているのと同様、もしくはそれ以上の知識があるものと見える。それならそれで話が早い。単刀直入に聞かせてもらおう。
「聞きたいことがあるんだ」
少年は一瞬、ニヤリと笑みを覗かせる。
「オッちゃん。悪いけど愛美ちゃんは俺のもんやから、手出さんといてくれる?」
東大寺少年は真面目な顔つきで、萩原を人差指で真っ直に指差した。
高校生からすれば十分にオジサンと呼ばれる年齢であることを、萩原はひしひしと感じながら、一瞬こわばった表情を辛うじて微笑に紛れさせる。
「オッ……。まあいい。近藤愛美という少女は……」
萩原に言葉をみなまで言わせず、東大寺は聞きたかったことにずばりと答えた。
「SGAのメンバー。俺らの大切な仲間や。SGAとは、警察や他の機関では手に負えへん難題を解決する〈何でも屋〉や。行方不明の人間捜しから野犬狩り、悪魔払い。依頼があれば何でもやる。それこそ人殺しかてな」