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案件4 きみにあいたい 36

 事故だとすれば、この四月に入って、二人目の交通事故による死亡者ということになる。

 哲郎も直哉も同じことを考えていたようだ。バスケ部の後輩が立て続けに死ぬなんて、

「だよな。また葬式かよ」

 死んだ二人の共通点? 直哉の胸に、ふと小さな気掛かりが芽生えたのだった。

  *

 出身地 大阪 生年月日 19XX年8月10日 血液型 O型

 現住所 東京都杉並区×× シノダアパート201号室

 身長体重 174センチ 60キロ 星成西高校二年(留年)バスケ部 成績 下

 

 星成せいじょう西高校に保管されている、ある在校生の少年の個人情報の一部だ。

 プライバシーの侵害などと近年騒がれるようになって、情報を引き出すのも一苦労だが、それはそれ。蛇の道は蛇と言って、雑誌記者の萩原は情報入手の抜け道を心得ている。

 さて、萩原が今何をしているのかというと、張り込みである。現在時刻は、午後五時四五分過ぎ。

 植え込みに腰掛けて、持久戦覚悟だ。本来の仕事を放っておいての、ごく個人的な興味の為だった。会社にバレれば、当然上司の小言どころではない。

 405号室の住人である近藤愛美まなみは、まだ帰ってきていない。好都合だ。

 今日用事があるのは、彼女ではない。それでは誰に用があるのかと言えば、先に言った星成西に通う東大寺はるかという高校生だ。

 萩原は、高校を卒業してから約十年になる。そう言えば、忙しさにかまけて、同窓会の通知にはいつも不参加に丸印をつけている。

 萩原も男子校だった。あまり男同士で集まるのも何だかと思っていたが、たまにはそういうのもいいかもしれないと最近は思うようになった。

 上下関係の厳しい部活、汗臭い暑苦しい男の園も案外いいものだったと、今では懐かしく感じる。

 何を隠そう、萩原もバスケ少年だったのだ。万年補欠だったが。

 そうこうしていると、お目当ての少年が駅の方向から帰ってきた。遥なんて可愛らしい名前だが、見てくれは精悍な顔つきの男らしいタイプだ。

 前をはだけた学ランから覗くシャツとスニーカーは、スポーツブランドだった。

 なかなかの好青年なのだが、口を開けば三枚目になりさがる。(それは失礼というものか)関西弁のユーモア溢れる少年だ。

 学ランの肩に、スポーツバッグ。手にはスーパーの袋を持っている。

 覗く中身は1リットルのパック入り牛乳、玉子に食パン、味噌、長葱、ジャガイモ、キャベツ、ミンチ肉等のちゃんとした食材が入っている。

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