表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/201

案件4 きみにあいたい 32

「別に、何も見えませんでしたけど?」

 愛美まなみは内心の動揺を気どられない為にか、わざと素っ気無い返事をしてくる。

 東大寺とうだいじは考え込むように、口をへの字に曲げた。

(俺にしか見えへん? やっぱり幽霊なんか)

「何かえたんですか?」

 訝るような愛美の視線に出合い、東大寺は口を濁したまま、黙り込んだ。何と言えばいいのか分からなかった。

 愛美はそれを知ってか知らずか、半ば強引に、話題を今夜の夕食の話に変えた。東大寺は安堵したものの、それ以上会話を続ける気にはどうしてもなれなかった。

(俺は狙われてるんか?)

  *

 英語の予習を済ませてから、シャワーを浴びると、もう十一時を回っていた。

 愛美は生乾きの髪を手櫛で梳きながら、キッチンの冷蔵庫を開けた。

 今日買ったばかりだというのに、牛乳がもう少ししか残っていない。東大寺の飲みっぷりがよすぎる所為だ。

 朝食に飲む物がないなと思いながら、残っていた牛乳を半分ほどコップにあけて、一気に飲み干した。残りの半分をもう一度コップに注いで、空になったパックをゴミ箱に捨てる。

 学校の帰りにでも、東大寺に牛乳を買ってくるように言わなければ。

 

 東大寺はもう寝てしまっただろうか。長門が夕方頃出かけていって帰ってきていないので、愛美と東大寺の二人っきりだ。

 飲みかけのコップを持って愛美が、リビングに行くと、東大寺がソファで横になっていた。

 自分の部屋に戻らず、そのまま眠ってしまったようだ。服も着替えていない。

 いつから寝ていたんだろう。愛美は部屋にいたので、気付かなかった。

 こんな所で寝てると風邪をひく。

 テーブルにコップを置いた。

 愛美が鼻でもつまんでやろうかと思った途端、気配でも察知したのか東大寺は眉を顰めた。

 うーんと唸り声を出す。怖い夢でも見ているのだろうか。愛美が心配になって声をかけようとしたその時、

「千……すまん。堪忍してくれ。千尋ちひろ

 ちひろ?

 東大寺は自分の寝言で目が覚めたのか、ガバリと身体を起こした。しかし完全に目覚めていないらしく、惚けたように愛美の顔を見つめている。

「東大寺さん。魘されてたけど、大丈夫?」

 返事はない。

「汗びっしょり。怖い夢でも見たの。タオル持ってくるね」

 気を利かして愛美がそう言うと、東大寺は愛美の腕を掴んで強引に引き寄せた。

「愛美ちゃん。ちょっとそばにおって」

 東大寺の腕に抱きしめられる形になって、愛美は少しドギマギとする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ