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案件4 きみにあいたい 29

 藤商は新校舎の増築中で、建築用の建材が積んであるのが、少し危ない感じがする。事故でも起きたらことだ。

 休み時間。

 トイレの後に、校舎内を散策していた東大寺とうだいじは、思わぬ人影を認め、駆け寄って思わず廊下の窓に張りついた。

 窓の前を塞ぐように鉄パイプの山が置いてあってよく見えないが、ピンクのランドセルが視界の端でチラリと動いた。

 突然、外に置かれていた鉄パイプの山が崩れた。

 東大寺は顔を庇うようにして、床に転がる。

 ガラスの割れる派手な音。

 東大寺はカメのように身体を硬くして、全てが終わるのを待った。身体を起こすと、手の平に焼けたような痛みが走る。

「どうしてこんなものが崩れるんだ。大丈夫か。お前? うわっ、血出てるぜ」

 鉄パイプの数本が窓を破ったが、幸い辺りにいた数人の生徒も軽傷で済んだようだ。手をついた時にガラスの破片で切ってしまったのだろう。手の平から血が出ている。

 東大寺は手の平を握り締めて、きつい横顔で窓の外を眺めた。高校の敷地内に小学生の姿がある筈がない。それも……。

「こんなん舐めとったら治る」

――一体全体どうなってるんだ。


「どうしたんですか。本当。東大寺さんらしくもない」

 東大寺の左手には包帯が巻かれている。

 放課後。

 愛美まなみは制服のまま、東大寺に付き合って買物の最中だった。

 休み時間に、増築に合わせて積み上げてあった建材の一部が崩れて窓が割れたらしい。偶然その場に居合わせた東大寺も、巻き込まれて怪我を負った。

 警察の調べによると、建材を縛っていたアルミ線が緩んでいたようだ。

 たいした事故にはならなかったが、一歩間違えれば、重傷者や死者が出た可能性もある。工事関係者が、厳重注意を受けたのは当然だろう。

 まあ、今回愛美達が出張している件とは関係がなさそうなので、どうでもいいが。

「ほんま最近ツイてないわ。今年は厄年かいな」

 そう言う割りには平気そうな顔で、東大寺は両手が荷物で塞がっていて頭が掻けない代わりに、へらへらと笑っている。

「ごめんな。付き合わせて」

「ううん。いいんです」

 怪我をしていることもあり、買物袋の一つを持とうかと言ったのだが、東大寺はにっこりと笑っただけだった。

 学校が終われば他にすることもないし、行く所もない。どうせ暇だ。図書館に行くのは後でもいい。

「それにしてもボヤで済んで良かったですね」

 何と。昨夜遅く、東大寺のアパートが火事になったそうだ。不運とは続くものなのか。

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