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案件4 きみにあいたい 26

「頼むから、大人しいしといてや。義兄にいさんらが可愛そうやから引き取ったんやで」

 叔父は、いつも人の顔色を窺っているような男だった。義父母との同居は、肩身が狭いという訳だ。

「ほんまに気色の悪い。人のこと見透かすような目ぇしよって」

 彼の前では隠し事は無用だ。みんな知っているのだ。叔父がもう何年も前から浮気をしていることを。

 甲斐性のない男にしてはよくやると、彼などは応援しているぐらいだ。

「ウチらが面倒みたらんかったら、あんたら兄妹施設送りやねんで」

 疑いもしていない女。その勝ち気な性格が、夫をして他の女に走らせるのだ。まあ、それだけではないのだろうが……。

 感謝して当然と言わんばかりの、押しつけがましさ。

 感謝はしている。まがりなりにも妹と自分の面倒を見てもらい、生活の心配をしなくても済むのだから。

「すんません。迷惑ばっかりかけて」

 彼は殊勝に頭を下げる。世渡りがうまくなくては、生きていけない。相手が心の中で彼らのことを何と思っていようとだ。

――俺ガ子供ヤナカッタラ、モット、モット、千尋ちひろノ為ニモ色々シテヤレンノニ。

 叔父夫婦と暮らした十ケ月が、一番長かったことになる。彼らとの生活は、叔父夫婦が離婚した為に破綻した。

 妹と彼は、父親の妹でいまだに独身の叔母の元に暫く預けられることになった。スナックを経営している叔母は、派手な生活をしていた。

 口を開けば、金のことばかり。

「穀潰しどもが。あんたの妹の治療費、月に幾らかかると思てんの?」

 妹は身体が弱い。あまり無理をさせると長く生きられないだろうと、医者からも言われていた。

 幼い頃は何度も大病をして死にかけている。だから、小学校の入学も一年遅れた。今でも、すぐに体調を崩しては、医者にかかっていた。

「すいません。俺でできることやったら、何でもやります」

 彼が新聞配達を始めたのは、この時からだ。

――親父トオ袋カラノ仕送リ、勝手ニ使イ込ンドルン俺ガ知ラントデモ思ットンノカ。

 この叔母との生活は三ケ月で終止符を打った。夜のお勤めをしている叔母との、放蕩を絵に書いたような暮らしぶりは、子供の情操教育にあまりにも悪いと判断したのだろうか。

 連れ合いを亡くしてからは、ずっと一人で暮らしていた祖母が、彼らの養育を買って出てくれたのだった。しかし、

「さっさと死んでくれたらええのに」

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