表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/201

案件4 きみにあいたい 19

「あっ……え……はい。渡辺新吾です。あの、僕、あなたがあの有名な東大寺とうだいじ先輩だとは知らなくって……」

 溜め息が出そうになったが、東大寺は無理に笑顔を作った。

 憂鬱ということはないが、少し面倒臭い。相手が気を使うとこっちも気を使う。

「先輩やあらへん。今は同じクラスメイトや。それに年上やからって、丁寧語はやめてくれん? なんや有名人()うても、別な意味でちゃうんか。学校にはぇへんわ、頭も悪くて留年なんかしとるし」

 渡辺新吾は、目の前で手の平をパタパタやる日本人がよくやるジェスチャーをした。

「あっ、僕なんか取り柄も何もないから、スポーツが出来る東大寺先輩が羨ましいです。いいですよね。何か一つ取り柄があったら」

 まあ、お世辞にもスポーツマンタイプにもガリ勉タイプにも見えない。

「何や、お前。可愛い顔して結構きついこと言うな。俺の取り柄は運動神経だけか?」

 綾瀬に言えば、それ以外に取り柄があったのかとでも言われそうだ。東大寺はつまらないことを考えてしまったと、ムッとした顔になった。

「済みません。僕、そんなつもりじゃ」

「いちいち謝らんでええし。僕、僕言うな。何や気色悪いわ」

 これだから、関西人は性格がきついと言われてしまうのだろう。

 渡辺新吾は、○○に塩のようにしゅんとしてしまった。○○に入る言葉をあてなさい。はて? 何に塩だったろう。なめくじだろうか?

 もし今、渡辺が東大寺の思考を読むことができれば、人選を間違えたことに即座に気付いただろう。しかし残念ながら彼は、超能力者でも何でもない普通の少年だ。

 渡辺新吾は、何か話したいことがあるらしい。立ち去り難そうにしている。

 東大寺は一時思考を中断して、少年に向き直った。どうかしたのかと問うと、渡辺新吾はためらいがちに話を始めた。

 ためらうぐらいなら言わなければいいものを。

 東大寺はポーズだけは話を聞く態勢をとっているが、その実頭の中は脈絡のない雑念で一杯である。

「実は、僕。堀田君と幼馴染みなんです。中学の頃は部活があっても毎日のように遊んでたんですけど、高校に入ってコウちゃ……堀田君はバスケの練習で忙しくって、あんまり付き合いもなかったんです。でも親どうしも仲がいいから、色々話とかは聞いてて……」

 要領の得ない話し方だ。東大寺は適当に相槌を打った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ