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案件1 そして誰かがいなくなる 15

 萩原は煙草に火をつけながら、頭の中の考えを素早くまとめた。

 幾ら賢そうに見えても、警察が情報洩れを防ぐ為に隠し通している連続失踪事件の中身までは知らないだろう。しかし祠と言った時の少女の怯えたような眼差しと、喰いつくような真剣さは只事ではなかった。

 

 彼女は確かに何かを知っている。

 

 自分はぎわらが知らない何かをだ。スクープを狙う記者の勘がそう告げている。

「緑ケ丘高校って、来年卒業する生徒が第一回目の卒業生なんだよね。その建物が建つ前は何があったか知ってるかい?」

 愛美まなみは知らないというのも癪だったので、緑ケ丘高校七不思議その1と男子がいっていた言葉を思い出し病院と答えた。

 萩原は残念そうな顔で、知っていたのかというように頷いた。

「病院だったのは戦中、それまではずっと田んぼ。その後は手付かずの林と、今はない会社の倉庫群」

 七不思議も案外、馬鹿にできたものではない。怪奇譚や民話が生まれるにはそれなりの訳がある。

 神隠しだってそうだ。

 人買いに買われていった娘を、神隠しにあったと思い込むことで、人為的現象は超常現象にすりかえられ、悲劇の質は変えられてしまうこともあったようだ。

 そういう実際的なものだけでなく、超常的なものが関わる神隠しは現実にあったのだと、愛美などは考えている。

「昔から、この辺りは神隠しが多かったらしくてね。祟りを鎮める為に、十二の祠を建てたという記述がこの地域――当時は無論小村だけど、の江戸時代中期の文献に残っている」

 愛美は十二という祠の数に引っ掛かったが、その時はそれだけで見過ごしてしまった。

 学校の裏庭にあったのは、十二の祠のうちの一つで、神隠しに関わる何かの封印が解けた為、緑ケ丘高校で連続失踪事件が起こっているという愛美の考えた脚本は、いま一つだ。

 萩原は、愛美の様子を窺いながら話を続けた。

「しかし、緑ケ丘高校に十三番目の祠があって、その中には・・・」

 十三番目の祠に納められた銅鏡。

 江戸時代中期ということは、1730年前後の徳川吉宗の時代、享保の大飢饉の頃だろう。しかし銅鏡は、たかだか三百年前の物には見えなかった。

「その文献って、もしかして土木関係のことを記したものじゃないですか?」

 萩原は、驚いたようにそうだと頷いた。愛美は当然予測できることなので、驚かなかった。

 祠や道祖神や地蔵は治水や潅漑、土木事業に深く関わっている。供養塔だけの意味合いではなく、その土地を守る一種の要だ。

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