案件4 きみにあいたい 18
堀田光治は一年のバスケ部員で、補欠だった。
星成西高校は昔からバスケが盛んで、生徒の人気も高く大世帯だ。弱小野球部とは訳が違う。
「事故。車道に突然飛び出して、車にはねられて三日後に死んだんだよ。俺ら葬式も行ったぜ。お前んち留守電もないから、捕まんなくってさ」
東大寺の胸を、たいして親しくはなかったが、見知った後輩の在りし日の姿が浮かんでは消えた。
身近な人間の死を人から知らされる時ほど、困惑することはない。
「……マジで?」
東大寺は静かに呟いた。
三人の話題はやがて別なものに移り、ひとしきり近況報告で盛り上がった後、結城直哉は壁の時計を見ると話をきりあげた。
「上あがってこいよ。尾崎と中田も一緒のクラスなんだ。みんな遥に会いたがってるぜ。お調子者がいないと盛り上がらないってさ」
「アーホー。誰が行くか。お前らみたいなボケナスと離れられて、こっちはせいせいしとるわ」
憎まれ口を叩くが、東大寺も満更でもない顔をしている。結城と安達は念を押すように、待ってるからと言って三年の教室へと戻っていった。
暫くするとチャイムが鳴って、担任が現れた。一年の時に、数学を習ったことがある。
担任のまだ若い男は、東大寺の登校をさして歓迎するふうでもなく、すぐに当たり障りのないH・Rを始めた。ホームルーム後、教師の松戸は昼休みに職員室に来るように東大寺に告げた。
一瞬早退して、白藤高校で捜査中の愛美と合流しようかとも思ったが、そうもいかないだろう。ここで大人しくお説教されるのも、これからの人間関係を良好にする為に必要なことだ。
このクラスには、バスケ部員は二人しかいない。二人とも補欠用員だ。
遅刻寸前に教室に駆け込んできた二人は、クラスに東大寺の姿を見ると挨拶だけは送ってきたが、それからこれといって話しかけてこようとはしなかった。
留年して同じ学年になった東大寺に、どう接していいのか分からないらしい。東大寺も複雑な気分ではある。
気の進まないまま一時間目の用意をしていると、誰かが傍らに立った。
「さっきは済みませんでした」
勢いよく頭を下げたのは、先ほど東大寺を、クラスを間違えた三年生だと、甚だ迷惑な勘違いをした少年Aだ。
憶病そうな大きな目と、反っ歯が愛嬌がある。やっぱりウサギだと東大寺は思った。
上目遣いで一言、名前は?と聞く。