表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/201

案件1 そして誰かがいなくなる 14

 それも束の間のことで、我が意を得たりとでも言いたげな得意そうな顔をする。

 愛美まなみはしまったと思うが、もう遅い。

「祠って言葉でそんなに反応してくれたのは、ほんの数人だよ。しかも君、祠についてかなり詳しく何か知ってるだろう。緑ケ丘では神隠しが頻繁に起こっているらしいし、色々聞かせてもらわなくちゃ。ここじゃ、何だから喫茶店にでも。勿論俺が奢るから」

 本当にこの男、新聞記者なのだろうか。

 悪い人間ではなさそうだが、緑ケ丘高校での事件を失踪と言わずに神隠しと言うなど、愛美達の知らない情報を握っているのかも知れない。

 男は逃がさないぞというように愛美の腕を掴んで、目の前に見えている喫茶店に連れ込もうとする。

 愛美は諦めて、男の好きなようにさせておいた。

 

 愛美は喫茶店の、喫煙席の二人掛けのテーブルに男と向かい合う形で座った。

 ウエイトレスがミルクティーとアップルパイとアメリカンコーヒーを、愛美と男の前に置いて立ち去ると、男はシャツの胸ポケットからおもむろに名刺を取り出した。

 喫茶店はモダンな雰囲気で、ジャズが低く流れている。学校の通学路にあるにしては、若い子向けではない。客は愛美とその男と、五十代ぐらいの夫婦らしい二人連れがいるだけだった。

 名刺には社名が刷られていなく、萩原はぎわら武史たけしという名と、携帯電話らしい番号が入っているだけだ。

 愛美が男の素姓に疑問を深めていることも知らずに、煙草を取り出した。コートの下はトレーナとダンガリーシャツでズボンはチノパンだった。

 まっとうな勤め人には到底見えない。

「私が話をする前に、あなたがどこまで知っているのか教えて下さい。そうしたら話が重ならないでしょう」

 萩原は、目の前のティースプーンでくるくると紅茶を掻き回している少女が、なかなか頭がいいらしいことに気が付いた。

 細く華奢な指。家事などしたこともないのだろうと思う。

 奇麗な弧を描く黒い眉。細い鼻筋の通った鼻梁。唇は朱をさしたように赤いが、口紅を塗っている訳ではなさそうだ。

 萩原には付き合っている恋人もいたし、ロリコンでもなかったが、目の前の少女には魅力を感じた。

「君の名前は教えてくれないの?」

 ちょっと未練がましい&下心ありそうな萩原の言葉に、少女はすげなく必要ないと答えた。

 高校生ということは15~18才なのだろうが、制服を着ていなければもっと大人っぽく見えそうだ。老けているというより、大人びている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ