案件4 きみにあいたい 6
たぶん最後の被害者と思われる林万里江のクラスメイトの二人――名前は忘れたが――に取材を試みた。なぜ早朝の学校にいたのかという問いには、行方不明中の級友を探す為だとはっきり答えたのだが、何があったのかという点については覚えていないの一点張りだった。
近藤愛美は、校内にある十三番目の祠の存在を認めていたが、校長はその事実を認めなかった。
だが、あの女なら使えるかも知れない。高橋芽久の母親だ。
事件が解決したのを自分にも感謝すべきだと、よく分からない言葉を萩原はその女の口から聞いた。使える男がいるとも言っていた。あんな子供を使っていては、児童福祉法にひっかかるとか云々。
その言葉を、気にも留めなかったことが今は悔やまれてならない。高橋芽久の母親の依頼を受けて、SGAから近藤愛美は緑ケ丘に派遣されたのではないかと推測できる。
もちろんその時は、SGAという会社の存在を知らなかったのだから、しょうがないだろう。もう一度、高橋芽久の母親に会ってみる必要があった。
緑ケ丘高校で、近藤愛美と会ったのはその一回きりで、その不思議な少女とはもう二度と会うことはないだろうと、萩原は踏んでいた。けれど運命は、再び二人を出会わせた。
鷹宮高校のMad Dog事件だが、これはあまり思い出したくない。
そして聖蘭女子校での自殺騒ぎが明るみに出た後。十日ばかり前に会ったのが最後だ。
すっかり彼女には嫌われてしまったが、おかげで萩原は俄然やる気になった。
聖蘭女子の事件で、名前も名乗らずに帰った少女に託された一冊のノート。女の子らしい可愛い文字や丁寧な文字の並ぶ四人の少女達の交換日記の中に、萩原は驚くべき名前を見つけた。
転校生として登場する少女は、まさしく萩原の追い求める近藤愛美その人だった。
日記の記述から類推するにその少女――莉奈〈リナ〉はなぜ、ノートを萩原に渡したのか。日記の文章からは、正義感の強さが感じられたが。それとも誰かに知って欲しかったのか。
何を? 自分達に起こった出来事を。ただそれが、たまたま雑誌記者である萩原だっただけのことなのかも知れない。
何としてでも事件の真相を知りたい。
そう思った萩原は、自分の手の届く範囲で、近藤愛美とSGAという会社について調べてみたが、その成果は芳しくなかった。そこで思いついたのがここだ。
近藤愛美が関わった事件を、新聞で洗い直そうと考えた訳だが、縮刷版でも電子版でもあるにしろ、新聞社には事件を担当した記者がいる。