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案件3 魔女裁判 41

「転校生の近藤愛美まなみさんと、臨教のヨハン=マクドナルド先生。近藤さん。早朝にお呼びたてして申し訳ありません。あなた達が何者かは存じませんが、動き回られると迷惑になりますから。口を噤んで戴きます」

 黒い長衣をまとった少女が、言葉とともに壁際から前に進み出てきた。

「これはまた、なかなか過激な発言ですね」

 紫苑しおんは困ったような顔をして、魔法陣と黒衣の少女を交互に見ている。

 紫苑も愛美も、ミシェル=ハワードが殺された時の状態は、理事長からの話でしか知らない。

 紫苑には彼がどのように殺されたのかは、容易に想像がついたらしい――黒魔術だ。召喚された悪魔に引き裂かれて殺されたのだ。

 その後、次々に続いた少女達の死は、呪いによって引き起こされたことを愛美は教えられた。

 ハワードはどうやらオカルティックな秘術や、神秘主義に傾倒していたきらいがある。それは趣味の域というより、探求熱心な研究者を思わせた。

 神学室は彼の管轄にあり、キリスト教と表裏一体である中世の錬金術や、神秘主義の資料を揃えて、ライフワークの一貫としていたようだ。

 金の無駄遣いに他ならないが、多かれ少なかれ、私立の芳醇な運営資金は教師達に還元されるものだろう。

 そのハワードは、飼犬に手を噛まれる形で、研究していた黒魔術によって死ぬ羽目になった。目の前に悪魔が現れた時、彼は後悔しただろうか。神を冒涜する売春の斡旋という罪を。

 少女は再び悪魔を呼び出し、愛美達を葬り去るつもりらしい。

夕璃ユリ様なんて呼ばれて、女王様を気取っているあなたらしいわ」

 愛美がはすっぱな調子で鼻を鳴らすと、紫苑が諌めるような顔をした。聞いていないと思っていたので、愛美はちょっと慌てて紫苑の背後に後退する。

 お手並み拝見といこう。

 心の優しい紫苑が、どこまで仕事と割り切って出来るのか、愛美には想像がつかない。しかし、紫苑はあくまで非情に徹した。

「立場上、あなたには死んでもらうしかありません。全ての罪を告解して、証拠の一筆書きを残して自殺して貰いたいのです。わざわざ手間をかけさせないでくれませんか。悪魔を召喚する用意をして、私達を呼び出すような真似は、見苦しいだけですよ。潔く罪を償いなさい。それが一番、穏当な方法です」

 夕璃は、傲慢極まりない表情を浮かべると、両手を愛美達の方に向けて突き出した。自分が支配者であることへの陶酔感に、酔いしれているようだ。

(醜い)

 愛美は、美しく完璧にさえ見える少女が、ただの欠陥品に過ぎないことを痛感した。

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