案件3 魔女裁判 35
彼女は言葉や動作には表さないけど、一番深く憤りと悲しみを感じているように見えるわ。自分のことだけを考えている私達とは、確かに違うでしょう。
このまま、理由の分からない殺戮が続けられるのでしょうか。警察など、ただのお飾りだという事実。いったい誰が、私達を守ってくれるのかしら。
私達四人の誰も、犠牲者になって欲しくない。偽瞞ではなく、真実そう思います。
私は醜い人間です。見栄と猜疑心と虚飾に彩られた私達の園の崩壊は、起こるべくして起こったものと思うわ。
でも、こういう終わりもよかったと思うの。犠牲は本当に大きかったけどね。
PS.このような状況で行われた創立祭の成功を、今は心から喜ぶばかりです。
それでは、愛をこめて。
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嘘。どうして、どうして彼女が死ななければならなかったの。嘘よ。嘘でしょ。誰か嘘だと言って。何で、誰がこんなこと。信じられない。許せない。誰か、嘘。どうして彼女が……。
*
見開きのページいっぱいに、その少女の心の動揺を表すように、走り書きがされている。
字は乱れに乱れ、普段の可愛い文字にはほど遠かった。強く押しつけられたらしいシャーペンの跡が、前のページにも箔押しの要領で残っている。
このあと白紙を三ページほどを残して、ノートは終わりを告げている。筆跡と、交換日記の順番を考えれば、これを書いた主は問うまでもない。
そして全ては終わったのだ。
*
学校の校舎というものは、通常どこも似たりよったりなものだ。床は、いまどき珍しい木造だが、歴史を感じさせる古さはなく、磨き抜かれた高級感に溢れていた。金がかかっているのが、一目で分かる。
放課後。
廊下の窓から差し込む光には、夕闇の気配が迫っていた。神学室と木のプレートが枠に差し込まれた扉は、西陽を浴びて、ただ沈黙を守っている。誰もいない廊下に、一人の少女の姿が現れる。
聖蘭女子高等学園。
制服は白のブラウスとジャンパースカートで、勿論名のあるブランドのものだ。
少女は神学室の扉に近づくと、ポケットから小振りの金色の鍵を出して、ドアの鍵穴に差し込んだ。
少女の姿が吸い込まれるように、扉の内に消える。窓に暗幕が下ろしてある為、部屋の中は暗い。少女はもの馴れた様子で、扉付近の電気のスイッチを探った。
白色蛍光灯の光が、さほど広くもない部屋を照らし出す。
窓と扉を除いて四方の壁に設置された書架の棚に、少女が近づく。