案件3 魔女裁判 34
しかも私の家は中流のサラリーマン家庭。シホさんの家のように銀行家でも、病院経営をされているリナさんのようでも、ましてやヒトミさんのような社長令嬢でもありません。
確かにこの学園は近藤さんの言う通り、本当に素敵な学校でしょう。しかし、あなた達に私のことが分かる筈がありません。
あなた達が見ているのは、この学園の氷山の一角だけです。見えていない部分にこそ真実があります。
確かに化け物の巣窟でしょう。
私が近藤さんに露骨な嫌悪を見せたのは、危険だと感じたからです。
私が守ろうとしている、ちっぽけなものを根底から覆されるのが怖かったのです。こうして壊れてしまうと、どうということもありません。
どうせ駄目になるんだったら、もっと早くに片をつけているべきでした。
それでは失礼します。
みんなへ 3/2
ヒトミのいたずらに関しては、怒りはもう湧いてこない。とっくに相手は殺されていたのだ。
私も、もうこの事件のことはどうでもよくなったと言う他ない。シホのあの人に対する思いも、アユカの考えも、ヒトミの気持ちも、何も自分は知らなかったのだ。
最後に私も真実を告げよう。
私は何度かハワード先生にアプローチされた。口説かれたと言ってもいい。可愛いと言われてその気になって、馬鹿だと思いたければ思えばいい。
別におかしな関係にはならなかった。最終的に彼に惚れこんだのは私だった。
嘘の手紙に呼び出されて、部活もないのに喜々として早朝の学校に行ったぐらいだ。その馬鹿さ加減も分かるだろう。
愚かだと笑いたければ笑えばいい。自分のできの悪さを棚にあげて、アユカに嫉妬していたことを、ここで告白しておく。
私も、近藤さんの存在が怖かった。心の奥に潜んでいる醜い感情を、見透かされるようで。自分がそんな卑賎な人間であることが露見するのが怖かった。
仲良しごっこの苦労はお互い様。それでも、楽しい時間が確かに存在したと私はそう思いたい。
この一年ありがとう。リナより
シホ→ディアフレンズ(こう呼びかけるの最後になりそうね)3/3
昨日の放課後。
九人目が変死体として発見されたそうね。教室のからっぽの机と、その上に飾られた花を見るに付け、悲しみが込み上げてきます。同じクラスで、ついに犠牲者が出てしまったわ。
みんな恐怖とショックを受けている中、近藤さん一人が冷静でいるのも、薄情な気はしないわ。