案件3 魔女裁判 33
ずっと黙っててごめん、アユ。どうしてサワダさんが殺された日の早朝に、リナが学校にいたか。
それはあたしが手紙で呼び出したからよ。差出人を、ミシェル=ハワードということにして。ちょっとからかってやろうと思っただけなの、信じて。
リナの気持ちをそれとなくシーちゃんから聞いて、ちょっと意地悪してやろうと思っただけなの。
だってあたしに、何にも言ってくれなかったじゃん。親友なのに、一言も言ってくれなかったじゃん。
きっとこのこと話したらリナは怒るだろうから、それが怖くて黙ってたの。でも、凄く悪いことしたなと思って、それにアユがリナのこと疑ってるから余計にそう感じて……。
だから礼拝堂で告白しようと思って……。
どうして礼拝堂に入るのを、近藤さんが止めたのか。彼女、知っていたのかしら。
ハワード先生が礼拝堂で殺されていたことを。礼拝堂内は、血と肉片で覆い尽くされてたんだって。
そんな滅茶苦茶なことってある?
学園側がそれを隠していたのは当然だわ。
リナは、あたしのこと許してくれないでしょうね。当たり前だわ。自業自得だもの。
交換日記を始めてもうすぐ一年。もう何冊目のノートかしら。せっかく今まで仲良くしてたのに。もう駄目だね。みんなバラバラになっちゃったもん。
ううん。そうじゃない。もともとバラバラだったんだ。ただ表面的に取り繕って仲良しごっこしてただけ。
全部壊れちゃったね。何もかも。
これが最後かもしれないけど、またね。バイバイ。
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アユカ
聖蘭女子で起こった一連の事件で、最初に殺された哀れな被害者は、失踪したと思われていたミシェル=ハワードその人だったのですね。
『誰が駒鳥を殺したの
それは私と雀が言いました
私のこの矢とこの弓で』
マザーグースにある『誰が駒鳥を殺したの』という歌の出だしです。これから延々と、死んだ駒鳥の為に鳥たちが葬式の段取りを決め、雀に対する裁判を行っていくのです。
マザーグースは英国独特のウイットに満ちていて、子守歌や囃歌・謎かけ歌の形をとりながら、残酷なブラックユーモアとシュールさを持っています。
私の作品に、暗いイメージがつきまとうというシホさんの指摘。その通りだと思います。
病気の為に中学浪人を余儀なくされた私は、皆さんもご存じのとおり一才年上です。