案件3 魔女裁判 32
自殺騒ぎが深刻化する前。この学園のことをどう思うか、近藤さんに聞いてみたことがありました。
こちらも儀礼的に聞いただけなので、今まで忘れていたのですが。思い起こせばあの人は、何だか怖い感じがします。
「素敵な学校だと思います。生徒は良家の子女ばかりで、教師の質も高い。整った設備と、古いものを懐かしむアンティーク趣味の校舎。まるで――そう。ガラスの温室だわ。薔薇の花が見事に咲き誇る。小さな王国。ここは、あなた達にとってそういう場所ね」
それが、彼女にとっては、化け物の巣窟にしか見えないなんて、皮肉なのか何なのか。
この学園も変わってしまったわ。美しい園は、心ない者に蹂躪されてしまった。悪魔を連れてやってきた者がいるのよ。私達のクラスにこそ、魔女が紛れ込んでいるんじゃないかしら。
PS.リナちゃんとヒトミちゃんが、早く仲直りできますよう。
たかが礼拝堂にヒトミちゃんが行こうとしただけのことで、なぜだなぜだと詰め寄るのはよくないわ。何をしようと勝手だと怒るヒトミちゃんも、もっともなこと。
でも、ヒトミちゃん。リナちゃんに何か負い目のようなものを感じていない? 何だか早く謝りたがっているようだけど、意地を張っているんでしょ。
お互い本当のことを言った方がいいわよ。
私とリナちゃんの仲は、壊れてしまったみたいだけどね。
もうすぐノートが終わるわね。私達の関係も、このまま終わるのかしら。
next→ヒトミ
ヒトミ→ディアフレンズ 3/1
ヒトミの予想が、当たっちゃった。休暇の届けもなく姿をくらましていたハワード先生が、実際のところとっくに殺されていたなんてさ。
やっぱりって言うか、そうだったのかーって感じ。もうどうでもいい。どうして殺されたのかも、犯人は誰とか、もうそんなことどうでもいいよ。もう疲れちゃった。
シーちゃんは、近藤さんが魔女だと言いたいみたいだけど、もうそうやって人のこと疑うのやめようよ。推測ばっかりで、馬鹿みたい。
悪魔は外から忍び寄ってくるものではなく、内側にいるものだって、聖書にもあるわ。
今のあたしらの状態って、それこそ内側の悪魔に支配されているのと同じだわ。甘い囁きは、誰かがするんじゃなく、自分自身の内から発せられているのよ。
リナと喧嘩したこと後悔してる。カッとなってつい色々言ったけど、本当はあたしその時に言うことがあったの。