案件3 魔女裁判 29
漠然とした不安ではなく、疑惑へと姿を変えたと言っていいでしょう。
私が休んだ日に事件が起きる。イコールで結ばれるのは気持ちのいいものではありません。六度もそれが続くと、偶然と呼べないのでしょうか。
皆さん、まるで私を疑っているような書きぶりですね。
噂なんてあてにならいことは、本人が一番よく分かっていますが、満更でもない噂もあるようです。
どこの誰とも知らない殺人鬼が、この学園に紛れ込んで殺戮を繰り返しているというより、この学園内にこそ犯人はいるのでしょう。
魔女がいるとはよく言ったものです。この聖蘭女子に、悪魔に魂を売り渡した魔女がいるに違いありません。
いえそれよりも、失踪しているミシェル=ハワード先生こそ、諸悪の根源ではないでしょうか。そう考えると自然な気もします。
とにかく犯人は、学園内の者でしょう。一体誰が、何の目的で、どのように六人の少女たちを死に追いやったのでしょうか。次は誰が狙われるのでしょう。
それは犯人と、狙われる覚えのある人だけにしか分からないことでしょうが、今頃どこかで戦々恐々と日々を過ごしている人がいることも事実でしょう。
一人減り、二人減り、三人減り……。そして誰もいなくなった。アガサクリスティーを思い出します。
伝説となった希代の殺人鬼、切り裂きジャックを生んだイギリスは、あの有名なマザーグースの国でもあります。
マザーグースのブラックユーモアとシュールさは、ひじょうに私の好みです。
私が中学一年生の時の文化祭のことです。
文芸部の文集の特集が、マザーグースでした。私は『不思議の国のアリス』のパロディ童話と、幾つかの詩を寄稿しました。
その詩の一つは、魔女というタイトルでした。久しぶりに思い出したので、捜し出して書いておきます。
もしよければシホさん、当時書いたパロディ童話も読んでみてもらえませんか。
魔女
町外れの黒い家に住む独り暮らしのお婆さん
子供が好きで 竃の中に放り込む
町のみんなは噂する なんといいお婆さん
子供は増えずにパンが増える
町外れの黒い家に住む独り暮らしのお婆さん
あんまり長生きしたもんで 竃の中に飛び込んだ
PS.リナさん。
お聞きしたいことがあります。
バスケ部は試合の敗退以後、朝練の活動は、休止されていたのではないかしら。どうして、サワダさんの遺体が発見された早朝に、リナさんは学校にいたのでしょう。