案件3 魔女裁判 27
なんか変わったというかミステリアスな子だと思ってたけど、話してみるとやっぱりかなり変わった子よね。でも何だろう。すごく魅きつけられる。
ユリ様に似ているかもしれない。あれ変だ。どこが似てるんだろう。
優しくて優雅でスマートで、聖母マリアでありながらジャンヌダルクでもあるユリ様と、近藤さんのどの部分が共通してるんだろう。
ユリ様は、近寄りがたいって感じは全然しないもん。
ユリ様って、全てが完璧で、神様が作り出された最高傑作よね。
近藤さんは、考え方が根本的に人と違うわよ。あたしらと同じものを見ているとは思えない。
ユリ様は後光が差してる感じで、近藤さんの場合はモノクロームって感じかな。
影が薄いんじゃなくって、何か同じ世界に生きてるって感じがしない。
うーん、ヒトミがアユだったらもっと上手に文章にできるんだろうけど。
それにしても、ヨハン先生と近藤さんって、何の関係もなかったみたい、当然よね。
たまたま始業式に転校してきただけなんだもの。初めから心配するほどのこともなかったんだって感じ。
しょせん噂よ、噂。
だって、ヨハン先生の名前を出してもきょとんとしてたのよ。しばらく話してて、ようやく誰のことか分かったみたい。ああ、英語の、だってぇ。
この学校にきて間もないから、人の名前も顔も覚えてないって言った後、少し気になることを言ったのよね彼女。
「覚える必要もない。どうせ長くないから」
もしかしたら、近藤さんって重い病に冒されていて、余命いくばくもないとか?
あっ。そう言えば、これは噂じゃなくって事実なんだけど。神学室の扉が開かないのは知ってる?
あんなとこ普段から人が使わないでしょう。だから、鍵が失くなってることに、ずっと誰も気付かなかったみたい。
でもぉ、話によるとその鍵を最後に持ち出したのって、ミシェル=ハワードらしいわよ。つまり去年の暮れから、あの資料室は開かずの間になってるってこと。
もしかしたら、ハワード先生。神学室の中で死んでるのかも。きゃっ、やだーっ。
って言うか、大体ナナが自殺する訳ないのよ。親友としての勘が言ってるもの。
絶対に殺されたんだわ。自殺に見えるような偽装工作を施されてね。
変質者なんかじゃないわ。犯人はこの学園の中にいるのよ。学園側がひた隠しにしている秘密に近づいた生徒が、口封じの為に消されてるんだわ。
一体誰が犯人なんだろう。