案件3 魔女裁判 19
文芸部は、毎年美術部と共同でパンフレットとポスター製作よね。それプラス記念文集作りじゃ、アユカさんも読書をする時間がとれないでしょ。
二六日の三年生の追い出し会。今年は創立祭の準備で忙しいから、手の空いてる者はみんな駆り出されちゃって、まさに総掛かりって感じだわ。
ヒトミちゃんは創立祭の実行委員会だし、リナちゃんも、運動部の方で送別会の進行係に選出されてしまったんでしょ。みんなそれぞれ大変よね。
一昨日のSt.バレンタインデーはいいことか悪いことかお休み。
女の子が自分の気持ちをチョコに託して、男の子に伝えるという謡文句ですが、デパートやお菓子会社の商法に、うまく踊らされているというだけの気も、しないではありません。
そう言えばヒトミちゃん。君の従弟君の名前、ダイキ君だったかしら。
私にくれるなんて言いながら、義理チョコにしろ彼にあげたんでしょう。可愛い従弟がなんだかんだ言って、お気に入りなのよね。
源氏物語やマイフェアレディの反対バージョン。自分好みの男を作り上げるなんて、とってもお洒落だと思うわ。
そうそう。私は、今年のバレンタインに義理チョコですが、初めて父以外の男性に上げました。と言ってもヨハン先生にだけど。
演劇の稽古で、発音のチェックをしてもらってるお礼のつもりよ。
ヒトミちゃんのように、下心(失礼《笑》)愛のこもった高価なチョコレートとは比べものになりません。
それにしても……思った通り、チョコがヨハン先生に集中してしまったわね。でもこの学校の男の先生って、結構レベルの高い人が多いわよね。
女子校の長い私から言わせてもらえば、かなり待遇がいいわ。まあ、中には数学の松村みたいに箸にも棒にもひっかからないのもいるけど。
でもヨハン先生は若くて、本当に素敵だもの。別格だわ。
私にとっては、バレンタインと言えば、あげるよりも貰うものと決まっています。中等科の頃も演劇部に所属していて男性役の多かった私は、たとえて言うなら宝塚歌劇の男役のような扱われ方をしていました。
幾つチョコを貰ったかなんて、まるでプレイボーイね。これが女子高の変わったところであり、面白いところだわ。
私は甘い物が好きなので本当に幸せ。
それにしても、昨日のアユカさんのチョコレートケーキは最高でした。ブランデーを効かせてあって、普段はお菓子には手を出さないリナちゃんも、喜んで食べていたもの。




