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えこらん ~工業系女子高生のカーレース~  作者: パンプキン ぽてと
4月
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9/33

自動車部~5人目~

 ~前回までのあらすじ~

 工業高校は女子嫌いの女子の駆け込み寺でした。


 ~本編~

 しかし、本田さんたちがゴーカート相手に作業している間はヒマですね。IT系専門の私には、機械いじりはできないので、ただ見ているだけです。あくびが出ちゃいます。


 三人とも背中に『SOUTH TECHNICAL HIGH SCHOOL』とロゴの入った濃い緑色の同じツナギを着ています。


 さらにイツキくんは頭にバンダナをしめて、溶接でアルミの棒をくっつけてます。何かの骨組みみたいです。車体になるのでしょうか?


 マキさんはカチューシャと保護メガネをつけ、テーブルの上でハンダゴテ作業中です。


 本田さんはゴーカートの下に潜り込んで何かしています。


 変な子たちですけど、マジメに部活をしてます。ここだけ切り取って見れば、変人だとわかりませんね。


 ただ一人、何もしていない人が……。

 稲盛さん、相変わらずデスクの下です。何やってんですか、あの子?



 ともかく、暇ですね~。ああ、またあくびが……。



 そのうち正午近くになりました。


「ちわ~~~~~っス!!」

 突如として車庫に響き渡る甲高い幼声。


 現れたのは体操着とブルマ姿の小さな女の子でした。ちなみに体操服の中心には大きく秋山と書かれています。


「小学生……? 誰かの妹さんですか?」


「誰が小学生じゃい!」


 間髪いれずに突っ込みを入れてきました。そして睨んでます。激・睨んでます。


「もしかして、ここの生徒さん?」


「もしかしなくてもそうじゃい」


「へえ、何処の学科なの?」


「人のことを訊ねるならまず自分から名乗れ。失礼な奴に名乗る名など、ハヤネにはないんじゃ」


 ……横柄な態度ですね。頭の悪い小学校低学年の児童みたいです。いや、幼稚園児かな……? これも工業高校生?

 まあ、ともかくひとつわかったことは……。


「秋山ハヤネさんですか。学科は? 学年は?」


「うあっ、えっ、な、何でハヤネの名前を知っているんじゃ? 超能力か?」


「いいえ……」


「そっか、自動車部の皆に聞いたな? 口の軽い奴らめ……」


「……苗字、体操服に書いてありますよ」


「あっ……! しまった……」


「名前はさっき自分で言ってたけど……ほんの十一行前に」


「うそっ」


「ホント。自分のこと自分で”ハヤネには……”って言っていたような……」


「そ、そうだったっけ……?」


 ほんの少し前に自分の発した言葉すら覚えていないなんて……。どんだけ物覚えが悪いんでしょうか。

 何かまた変人臭のする子ですね。



「うう……、バレてしまっては仕方がない。ハヤネこそが、陸上部スプリント競技のエースにして次期部長の秋山 速祢はやねじゃぁーい」


「…………」


 声がでかければ、ポージングも奇抜な自己紹介ですね。ライダー、変身!!……ですか?



「で、お前は誰だ?」


「新しい顧問の上尾先生よ」

 車体の下から出てきた本田さんが説明してくれました。


「あ、先生だったんだ……」


「何となく予想できるもんだと思うけど……」


 呆れ顔の本田さん。彼女に訊ねました。


「あの、部活を掛け持ちしている子って……」


「そうじゃ。ハヤネはあやのんにどうしてもと頼まれて、自動車部もやっているんじゃ」

 秋山さんが口を挟んできました。

「だが何を隠そうハヤネの真の正体は、日本人で初めて百メートル十秒を切る予定の陸上部員だったのじゃー。別名、南工のジェット・ストリーム・アタックと呼ばれているが、このハヤネじゃーい!」


 ジェ、ジェット・ストリーム・アタック……?

 ……ひょっとして……『ジェット桐生きりゅう』と言いたいのでしょうか?


「今日もさっきまで、グランドで必殺のドルフィンキックを練習してきたんじゃ」


 ドルフィン……キック……って?


「スタートダッシュのことじゃい」


「…………?」


 陸上のスタートダッシュをドルフィンキックって言いましたっけ? 隣の本田さんも、そしてイツキくんもマキさんも小首を傾げています。


「あの~、ドルフィンって何の動物か、あなた知ってる?」

 不審に思って私は訊ねました。


「もちろん。犬だろ?」


「い、犬……?」


 ドルフィン・ドッグ……ってことですか? そんなウナギ犬みたいなハイブリッドけんがいるんですか?


 困惑する私と他の自動車部員を余所よそに、秋山さんは得意気に言いました。

「足のすっごい速い犬。イングリッシュ・ゴ・ドルフィン・レトリバーとかいう犬」


 け、犬種だったんですか?

 しかも犬とイルカだけじゃなく、馬まで混じってません? サラブレッドの元になったとかいうアラブ系の馬が……。


 まあ、でも走ったら速そうだし、ついでに盲導犬にも向いていそうですね。


 本田さん、頭を抱えています。頭痛がするのでしょう。わかります、何となくわかります。


「ハヤ、ドルフィンは犬じゃないから……」

 ため息交じりに彼女は言いました。


「え、そうなの?」


 すると私たちの眼の前を、一羽の小鳥がスッと飛んで行きました。


 途端に秋山さんがポンと手を叩きました。


「そっか、じゃあツバメのことか」


「ツバメはスワロウでしょ。目にしたものを根拠もなく答えにしないで。そもそもあの鳥はスズメよ!」


「んじゃ、ひょっとして鷲?」


「イーグル!」


「アホウドリかな?」


「それはアルバトロス」


「そっか、コンドルだ!」


「違う! どうしてゴルフ用語になるの? ってか鳥でもないから。犬や鳥から離れなさい。ドルフィンってのは……」


「わかった、馬だ! 速いからな……」


「人の話しを聞けえぇぇぇぇっ!!!」


 本田さんの怒声が響き渡りました。






 ちなみに……


 ドルフィンキックとは……競泳のキックのこと。スタート直後に足を揃えて水を蹴る泳法。

 陸上選手がスターターから飛び出すロケットスタートのことを、ドルフィンキックとは決して言わない。




「あのー……この頭の痛そうな子はいったい……?」

 怒鳴ったせいで息を切らしている本田さんに、耳打ちしました。


「ハヤは陸上部の推薦でこの学校に入ったから、頭が悪くて悪くて……絶望的に悪くて……」


「ひょっとしていつもこんな感じ?」


「こんな感じです」


「さっき、どうしてもと頼まれて入部したって言ってたけど、本当?」


「悲しいことに本当です」


「どうしてこんな子を……」


 そうだ、部員数が足りないんでした。人数合わせのためとはいえ、大変ですね。


「まあ、それもありますが……一応、ハヤにも重要な役目をになってもらってます。こんなのでも……」


「重要な役目?」


「ドライバーです」


「ドライバー?」


 めちゃくちゃ重要じゃないですか。この子で大丈夫なんですか?


「ドライバーは体重が軽い方が有利なんです。しかも陸上競技やっているから運動神経いいし、コース取りも上手いので」


 なるほど、一理あります。…………不安もありますが……。



 そんなドライバーの秋山さん、今はマキさんからドルフィンの説明を受けています。



 そういえばあの子が着ている体操服とブルマ、この学校指定のものではないはずです。何故そんなものを着ているのか、と訊いたら私の負けでしょうか?



「ハヤ、ドルフィンはもういい?」

 本田さんが訊ねると、秋山さんはバッチリじゃと元気に答えました。


「じゃあ、さっそくマシンに乗って。お昼の前に、走行テストやっとくよ」



 キャラ紹介は以上です。

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