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えこらん ~工業系女子高生のカーレース~  作者: パンプキン ぽてと
4月
22/33

自動車部会議 その後

 定時から2時間も過ぎました。ようやく帰れます。


 グラウンドでは野球部がまだいます。清原先生がノックをしているのが見えます。これが全てサービス残業だというのだから大変です。


 私も帰る前に、自動車部のガレージの戸締りを確認していきましょう。


「やあ、カミ子先生も今帰り?」


 渡り廊下で和葉先生に会いました。


「そこまで一緒に行こうか」


「はい。そういえばさっき、変な家庭科部の生徒さんが情報科に来ましたよ」


 歩きながら言いました。


「ああ、DMでしょ」


「DM?」


「堂内ミランのイニシャル。昔、同じイニシャルのエロドルがいて騒がれてたっしょ。あいつも男を乗り換えるのが早いから愛人とかビッチってツイートされちゃってる」


「……なかなか強烈でした」


「うぜえだろ」


「教師がそういうこと言うのは……」


「実際うざいから。成績悪いし、空気読めないし、敬語使えないし、態度悪いし、教員なめてるし、トラブルメーカーだし……。けど工業科の教員はおじさん、おじいちゃんばかりだから指導しないんだよな。工業はもともと男子校で、女子の扱いなれてないセンセーばかりだから」


「はあ……」


「ちなみにヤツのフリーダムが巻き起こした惨状は”ミラン地獄”と呼ばれている」


 確かにさっきの準備室のあれは地獄でした。


「唯一のお嫁さん部員だから許してやってるけど、でも同じ女としては、普通なら絶対仲良くしないタイプだ。カミ子ちゃん、同級生であんなのいたら仲良くする?」


「えぇ~……」

 返答に困ります。


「まあ、工業高校の女子は、女子の中じゃ馴染めない奴らが多いからな。ちなみに工業高校の女子は二つのタイプしかいない。男好きの女か、男化した女のどっちかだ」


 異論を探しましたが見つかりませんでした。全国の工業高校女子のみなさん、すいません。


「男化した上級者の中には髭は生えてる奴もいるんだよなぁ。ホルモンバランス狂うのか?」


 急に不安になって頬をさすりました。これでも産毛はちゃんと処理してますよ。化粧気がないとよく言われますが……。


「そして工業高校の男子は二通りしかない。オタクなバカか、脳筋のバカか……あるいは男色に目覚めたバカだ」


 三通りになってますが……。


「だから工業高校に男漁りにくるのは間違っているんだよ。男同士が漁っているのを見ないと」


 相変わらず言ってる意味がわかりません。


「あれ?」


 自動車部のガレージに明かりが。もう全員帰っている時間帯なんですが。

 しかも軽快な音楽が流れています。これ、聞いたことがあります。確か、昼休み放送部がよく流してるアニソンだったはずです。


 そっとガレージの中を覗くとそこには一人、鏡の前に立つ稲盛さんの姿が……。彼女がデスクの下から出ているというだけでも珍しいのに、その姿を見て更に驚愕しました。白のスク水にニーソを着ています。鈴ちゃん先生に着せようとしていたアレですよ。しかも全身鏡の前でポーズとってます。表情も普段の鉄面皮ではなく、アイドル並みに作ってます。今の彼女、好きな食べ物は? って訊かれたら、間違いなくイチゴって答えますよ、これは!


 あまりのギャップに言葉も出ません。


 しかしあの衣装、ジェニファー先生に着せているだけでなく、ちゃんと自分でも実用していたんですね。だから部室にいくつもサイズ違いのコスプレ衣装があったわけですか。


 まるで夜中に機織はたおりをする鶴を見た心境です。見てはいけないものを見てしまいました。むしろ見たくなかったような……。


「わーお」

 稲盛さんの一人ファッションショーに、和葉先生が感嘆しました。


 振り向いた稲盛さんと眼が合いました。お互いに金縛りにあったように動けませんでした。しかし徐々に、稲盛さんの顔に羞恥と絶望が入り混じった色が浮かんできました。


 まるで客人が寝静まった深夜に、包丁を研ぐ山姥やまんばを見た心境です。


「逃げよう」


 和葉先生の言葉で金縛りが解けました。


 何故かわかりませんが、私たちは全力疾走で駐車場の自家用車まで走りました。来週の月曜日、お互いどんな顔で会えばいいんでしょう。教えて、コミケのカリスマレイヤーさんたち。


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