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えこらん ~工業系女子高生のカーレース~  作者: パンプキン ぽてと
4月
21/33

工業高校あるある その2

 自動車部会議の後、私は情報科棟の準備室に戻ってきました。

「はあ…」

 何だかどっと疲れました。


「いかんなあ、上尾先生」


「内田先生?」


「ため息をしていると幸せが逃げちゃうよ~ん」


「部活指導の難しさに、疲弊しています。クセのある生徒が多いと大変ですよね」


 内田先生は笑いました。

「顧問は放課後の担任だからね。場合によっては担任以上に関わることになるし」


 両肩にかかる重みが増しました。


 するとノックもなく、いきなり準備室のドアが開いて一人の女子生徒が入ってきました。

「失礼します。堂内ミラン、歌います!」

 そして鼻にかかった声で、力いっぱい横隔膜を使って、最近の流行歌を歌い始めました。しかも準備室で、教師の視線を一身に集めながら……。これは百パーセント疑いようのないバカです。まあ、歌は上手いですけど……。カラオケの常連でしょうか?


 この子は確か、清原先生のクラスの眉毛のない女子生徒……。急にやってきて何ですか、この子。セーラー服に、フリルつきのエプロンを着て歌を歌う。奇行にもほどがあります。自動車部員みたいです。


「ありがとうございました!」


 歌い終わると、情報科教員から拍手が起こりました。皆さん寛容ですね。


「クッキー作ってきました!」


 堂内さんはそう言って、皿に乗ったクッキーを来賓用のテーブルの上に置きました。


「クッキー? おうちで作ってきたんですか?」


「ちが~う、部活動!」


「部活?」


「ミランはお嫁さん部なんです!」


「お嫁さん部?」


 どこかで聞いたような……。


「ひょっとして和葉先生の……」


「別名・家庭科部~!」


 正式名が家庭科部で、別名がお嫁さん部だったはずです。


「これは担任の清原先生のために作ってきました~。あれ? 清原先生は?」


「残念、もう野球部に行ったよ」

 クッキーをつまみながら内田先生が答えました。


「え~、最近つれない~」


「一年生にいいピッチャー候補が入ったって言ってたからね~。熱が入ってるみたいだよ~」


「どの科ですかぁ?」


「機械科」


「かっこいい?」


「さあ?」


「紹介してくれないかなぁ」


「バスケ部の彼氏は?」


「四日前に別れた~」


「これで何人目だい?」


「六人目かな?」


「入学して一年でそんなに?」


「違うよ~、今年に入ってからだよ~」


「……」


 そこでグラウンドから、野球部の野太い掛け声が聞こえてきました。すると堂内さんがいきなり身もだえし始めました。


「はああぁぁ、やっぱ男子の掛け声っていいわぁ~。この辺りが……」

 と円を描くように下腹部を撫でます。

「キュンッてきちゃう……。よっしゃぁっ、やる気が出てきた。いいお嫁さんにならなきゃ!」


「お嫁さんですか?」


「うん、お嫁さん部だから。ミランはぁ、二十歳までに子供産みたいんです!」


「……」


 私は既に二十歳過ぎです。まだ未婚です。彼氏もいません。



「内田先生、顧問といい部員といい、家庭科部ってのは変人ばかりですね」


「自動車部が他人ひとのこと言えるのかい?」


「…………失礼な!」



 工業高校あるある、その2。男目当てで入学してくる女子。

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