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えこらん ~工業系女子高生のカーレース~  作者: パンプキン ぽてと
4月
17/33

工業高校あるある その1

 扉を開けると、そこには30人あまりの高校男児がパンツ一丁でいました。ちょうど体操服に着替えているところでした。


「いやん、先生。えっち!」

 一番近くの男子生徒が腰をくねらせています。キモいのでスルーしましょう


「あー……身体測定、早く着替えて保健室来てね」

 すぐに扉を閉めて保健室へ向かいました。


 年度初めの恒例行事の中には身体測定があります。

 保健委員の担当である私は、生徒の案内やら整列やらが仕事になります。


 保健室へ向かっていると、和葉先生と出くわしました。この人も保健委員担当でしたね。私と同じように生徒を案内しているのでしょう。


「あー……男臭い……。オスの臭いって好きじゃないんですよね」


「おやおや、若い女が男の臭いが嫌いとは……カミ子ちゃん、いいオナニーしてないんじゃない?」


「……不衛生だと言っているんです。あの子たち床の上に座るし、のばした髪からはフケを飛ばすし、トイレで手を洗わないし、男子高校生って不潔感の塊じゃないですか。学校って、世の中でもっとも不衛生な場所に思えてきました」


「工業高校ではそんな不潔で不衛生な青臭いガキどもが、女子がいない中、たまりに溜まった禁断症状にもがき苦しみ、飢えた性欲を制御しきれずに道を踏み外していくかもしれないんだ。そんな男汁を交換する現場を見たいとは思わないのかい?」


「思いません」


「やっぱりいいオナニーしてないね? 今日ほど奴らの青いケツを堂々と視姦できる日はないってのに」


 こんな特殊な趣味嗜好の人にボヤいてもまともな答えは返ってきません。もっと人を選ぶべきでした。



 体操服の短パンに、剃り残した髭、すね毛、腕毛、鼻毛……このむき出しの男性ホルモンが充満した場所がこれからの仕事場とは……。生理不順になりそうです。私、1年間耐えられるのでしょうか……?


 対して養護教諭のすずちゃん先生は、小さいながらも慣れたものです。


「鈴ちゃ~ん、彼氏いるの? そいつ犯罪っスね、未成年者略取で」


「すずちゃんって家じゃ何着てるの? 全身着ぐるみとか?」


「俺の腹筋どうっすか? その下はさらに硬ぇけど(笑)」


「あー、チンポジちょっちまずい」(股間をかく)


「この猫耳のカチューシャ、今度つけてくれませんか? ついでに尻尾も……はぁはぁ(荒い息遣い)」


 などといった生徒のセクハラ発言も適当にあしらって、テキパキと測定をこなしていきます。ホントに優秀な人ですね。




 全クラスの男子が終わると、次は女生徒です。工業高校の女子は人数が少ないので、クラス別ではなく、学年全体で集めていっぺんに測定します。これから2年生の女子の測定になります。


「カミ子先生、女子更衣室に行って、呼んできてください」

 と、すずちゃん先生。先生も私のことを”カミ子”と……。



 女子更衣室(女子生徒が入学する前は教材倉庫だったらしい)にノックして入ります。30人くらいの女生徒が体操服姿で狭い部屋にひしめいていました。これが2学年の女子全員のようですね。



 私の指示で、保健室へ移動していく女子の中には、自動車部の面々もいました。


 本田さん、秋山さん、稲盛さん、そしていつきくん……。


「ちょぉっとぉ!」


「ん?」

 と細身のイケメンは振り返りました。


「な、何でいつきくんがっ? ここ、女子更衣室だよ!」


「そぉっスよ」


「いやいや、そうじゃなくって!」


「いやいや、やだなぁ先生、こんなところから女の子たちと一緒に出てきたってことは、決まってるっしょ」


「き、決まっているって……覗き?」


「こんな堂々とした覗きがいるかい? つまりぃたった今、ここにいる女の子たち全員喰っちゃったとこっスよ」

 そう言って、いつきくんはペロリと舌を出しました。


「え……」


 周りの女の子は赤い顔をしています。


「…………(呆)」


 マジっすか!!?


「違います!」

 聞き覚えのある冷静なつっこみ。


「本田さん、どういうこと?」


「こういうことです」

 といつきくんの服と半ズボンをずらしました。男子なのにスポーツブラをしています。ボクサーパンツには男子特有の凸もありません。

 本田さんはさらに私の手をとって、いつきくんの胸に触れさせました。や……柔らかい……。



「あのさ、俺って今、教師から性的暴力受けてない?」


「女同士なんだから問題ないでしょ。それに普段はあなた自身、他の女の子たちにいっぱいセクハラしているくせに」


「まあ、確かにねぇ」


「ど、どういうこと?」


「いわゆる百合っていう不治の病です。ヘンタイなんです、こいつ」


「いや~、産まれてくるとき母ちゃんのおなかの中にチンコ置き忘れてきちゃったんスよ、オレっち」


「……」




 そのあと保健室へ戻るまでの道のりをよく覚えていません。はっきりしている次の記憶は、保健室の扉を思い切り開け放つ瞬間でした。室内にはすずちゃん先生と和葉先生がいました。


「先生! すずちゃん先生!」


「……すずちゃんやめてくださいよ、カミ子先生」


「そんなことより、そんなことより、い、い、い……」


「落ち着きなよ、カミ子ちゃん。ろれつ回ってないよ」


「か、和葉先生……い、い、いつきくんが……女の子でしたぁっ!」


「それって自動車部の川島いつき? ああ、カミ子ちゃんやっぱ気づいてなかった?」


「あ……? 知っていたんですか?」


「そりゃ知ってるでしょ。性別 いつわって入学なんてできないんだし」


「な、何で教えてくれなかったんですか! 私、顧問なんですよ!」


「だって面白いそうだったんだもん」


「……」


 和葉先生の隣では、すずちゃん先生が仔うさぎのように体を丸めて笑いを堪えています。


「すずちゃん先生も知っていたんですか」


「ゴメンネ、和葉先生が口止めしてて……」


「……」


 見つめた手のひらには、さっき思いっきり握り締めた胸の感触がまだあります。


「あの子、背高いし中性的な顔してるからね。でも正真正銘女の子。健康診断書もこの通り。性別欄見てよ」


 すずちゃん先生に渡された診断書を見て、改めて驚愕しました。


「う、嘘でしょ……」


「いや~、いい顔、いい反応するね~。面白いわ~。やっぱ黙っていて正解だったわ」


「わ、私よりウエスト細いなんて……」


「「そっちかよ!」」



 自動車部のいつきくんは、実はいつき”さん”でした。


 工業高校は男どもの監獄かんごく。男の中でもまれているうちに恥じらいがなくなり、男化おとこか、おっさん化が進み、こうなってしまう女生徒が多いとか、少ないとか……。



サブタイトルに惹かれるのか、この話だけやたら読まれています。


でも他の話は読者数が伸びないんですよね。

もっと面白い話が書けるように頑張ります。

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