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第80話(番外編完結) 帰還と決算報告 ~ただ快適に休みたかっただけなのに、なぜか超優良資産が完成していた~

一ヶ月間に及ぶ、株式会社デーモン・ホールディングスの全社員慰安旅行が、ついに最終日を迎えた。

帰り支度を終えた数万人の社員たちが、続々と超巨大空中要塞「デーモン・エアライン」へと乗り込んでいく。


「ヒャッハー!最高の休みだったぜ!」


オークやゴブリンたちは、南国の強い日差しで真っ黒に日焼けし、充実感に満ちた顔で笑い合っている。


アリスは両手に抱えきれないほどのトロピカルフルーツとお土産のスイーツを持ち込み、ミナは最後までビーチで映え写真を撮り続けていた。

ガントもすっかりリフレッシュした様子で、警備部長としての鋭い目つきを取り戻している。


そして、我が社のCEOであるゼノン様はといえば。


「ガハハハ!クリフよ、見ろ!あの後さらに三人の人間貴族から、総額5000億マナの投資確約書にサインさせてやったぞ!これで余も立派なトップセールスマンだな!」


アロハシャツ姿のまま、分厚い契約書の束を掲げて大笑いしていた。


私は静かに頷き、その契約書を受け取って鞄にしまった。


「ええ、素晴らしい成果です。これで当面の事業拡大資金には困りません。ゆっくり休めたようで何よりです」


「うむ!最高のバカンスであった!」


要塞のタラップの下では、島の人々が見送りに来てくれていた。


「クリフ様!本当に、何から何までありがとうございましたじゃ!」


村長が涙ぐみながら深く頭を下げている。


「お兄さんたちのおかげで、村が世界一豊かになったニャ!スパの技術も大繁盛だニャ!」


猫の獣人ニャルが、真新しいマナ紙幣の束を握りしめて満面の笑みを浮かべていた。


沖合では、波のプール責任者として雇用したクラーケンが、別れの挨拶代わりに器用なウェーブを起こしている。

彼ら現地住民にとっては、突如として島が近代化し、莫大な富と雇用がもたらされた怒涛の一ヶ月だっただろう。


私は彼らに向けて、CFOとしての営業スマイルを向けた。


「皆さんの働きのおかげで、私も良い休息が取れました。引き続き、当リゾートの運営と品質維持をよろしくお願いします。来月には、人事部から正式な給与明細とインセンティブが届くはずです」


「おおお!一生ついていきますぞ、しーえふおー!」


私はタラップを登り、要塞の展望デッキにある自分の指定席へと腰を下ろした。


アリスの操縦により、デーモン・エアラインがゆっくりと空へ舞い上がる。

眼下に遠ざかっていく美しいエメラルドグリーンの海と、白亜の巨大カジノ施設、そして整備し尽くされたプライベートビーチ。


私はアイマスクを外し、一ヶ月ぶりに本格的な『業務』として魔導計算機を起動した。

今回の社員旅行における、最終的な決算報告書を作成するためだ。


もともと、この慰安旅行は『完全な経費』として計上されるはずだった。


移動費、滞在費、食費、そして一ヶ月間の営業停止による機会損失。

私はそれらを最小限に抑えつつ、ただ自分が誰にも邪魔されずに昼寝をするためだけに、現地の非効率なオペレーションを改善した。


だが、計算機が弾き出した最終利益は、私の当初の想定をはるかに、狂気的なレベルで上回っていた。


……。

私は表示された数字を見て、深く、ひたすらに深いため息をついた。


人間の貴族たちからダイナミック・プライシングで巻き上げた法外な宿泊費と飲食代。


アリスの完全確率カジノが吸い上げた、総額数兆マナに及ぶギャンブルの売上。


ゼノン様が暇つぶしにトップセールスで獲得した、巨額の投資ファンド資金。


そして、今後永続的に利益を生み出し続ける『世界最高峰の統合型リゾート』という、評価額算定不能な超優良子会社の完成。


「どうしたのクリフ、ものすごい疲れた顔してるけど」


アリスが操縦席から振り返る。


「……ただ、快適に休みたかっただけなのですが」


私は計算機の電源を落とし、疲労と、ほんの少しの達成感が入り混じった息を吐いた。


「有給休暇で遊びに行ったはずが、なぜか会社の利益が300%も跳ね上がってしまいました。これでは、王国や聖教国のみならず、世界の経済を丸ごと飲み込むのも時間の問題ですね」


アリスが呆れたように笑う。


「あはは、クリフらしいや。結局、根っからの仕事人間なんじゃないの?」


「心外ですね。私は定時退社を愛する、善良なホワイト企業のCFOです」


私は再びサングラスをかけ、デッキチェアに深く背中を預けた。


窓の外には、魔界へと続く青い空が広がっている。

明日からはまた、魔王城での日常業務が始まる。


だが、今回のバカンスで得たこの莫大な資金とリゾート地は、デーモン・ホールディングスの世界征服……

いや、グローバル・マーケット・シェアの拡大に向けた、最強のカードとなるだろう。



私は心地よい疲労感と共に、今度こそ誰にも邪魔されない、帰りのフライトの短い眠りへと落ちていった。



【番外編】リゾート開発&社員旅行編(完)

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マニアックなネタに付いてきてくれて、ありがとうございます!


あとりえむ 作品紹介

地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 やっぱりせかいはまあるいほうがいい S級清掃員 至高のミミちゃんを見守る会 君が遺した種子は、森には還らなかった。

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