第19話
麗は、炎に包まれ意識を失った鈴を見つめ、さらに両膝をつき生死の知れない万里へと視線を移した。
彼女の目の前には、黒い衣を纏い、巨刃を手にした高順が、まるで微動だにせぬ鉄壁の如く立ちはだかっていた。彼は自ら攻めてくることすらせず、ただそこに立っているだけだった。だがその圧倒的な存在感は、いかなる攻撃よりも激しく、息を詰まらせるほどの重圧を放っていた。
絶望という名の氷霜が彼女の心に広がり始め、呼吸を凍てつかせ、瞳には次々と涙が溢れてきた。
怖い……
彼女の胸は激しく上下し、喉の奥は焦げた油と灰の味で満たされた。呼吸は乱れ、荒くなり、生存本能が悲鳴を上げている。だが彼女は、無理やり自分をその場に釘付けにした。
私に、本当にこいつが倒せるのか……
その時、遠い記憶の中の声が、凍った湖面に響く清らかな音のように、崩壊寸前の彼女の意識を猛然と貫いた――
『あれこそは我が甄府最強の剣侍姉妹、鈴と麗だ』
甄儼様……
ほぼ一瞬にして、麗の姿はその場から掻き消え、ぼやけた残像と化した。地面に張り付くかのような信じがたい低姿勢で、高順の側面へと回り込む。
高順の体は微動だにしない。彼は頭を向けることさえせず、ただその陰鬱な瞳だけをわずかに動かした。
麗はすぐに剣を振るわなかった。極限の距離まで肉薄した瞬間、彼女は右手を下へ走らせ、炎に焼かれ干からびた土と焦げた砂灰を地面からすくい上げ、猛然と高順の顔面目掛けて投げつけた!
「ザッ――」
火の粉を纏った砂埃が、高順の視界を遮った。いかに鉄塔の如き巨躯であろうと、最も本能的な防御反応を取らざるを得ない――彼の空いた手が猛然と上がり、目を庇ったのだ。
今だ!
砂埃が顔を襲った瞬間、麗はすでに全身の力を振り絞り、腰に隠していた炸裂弾を高順の足元へ投げつけていた。それは親指ほどの大きさの黒い玉に過ぎなかったが、地面に触れるや否や爆発した!
「バン!バン!バン!」
連続する三つの鈍い音が、目もくらむ閃光と耳をつんざく高音を伴い、高順の足元で炸裂した。
麗はその黒煙を死に物狂いで見つめ、冷静に思考した。
どうする?姉さんを連れて逃げるか?それとも……
たとえ高順の聴覚と肉体的な防御力がどれほど強靭であろうと、至近距離での奇襲は彼の動作にコンマ数秒の遅れを生じさせた。巨体がわずかに揺らぎ、斬馬刀を握る腕の筋肉に、一瞬の収縮の隙が生まれたのだ。
隙あり!
麗はカッと目を見開き、全身の血液を四肢に凝縮させた!
彼女は低く獣のような叫びを上げ、その身は光となって猛然と躍り上がり、手にした長剣は天地を貫くほどの鋭い輝きを放った!




