表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ①

【速報です。今日午後、港区の路上で『ホストの覇者』として知られる元ホストで実業家の一条司(いちじょうつかさ)さんがナイフのようなもので刺され、搬送先の病院で死亡しました】


 暗い小さな部屋のスクリーンにその映像が繰り返し映し出された。


「おーい! ねぇってば〜、ちょっと〜??」


【警察によると、犯人は一条さんの熱狂的なファンで、執拗な追跡の末に犯行に及んだと見られています。現在、警察が詳しい動機を調べています】

 

 一条司が死亡したというニュース。つまり……俺は死んだのか?


「ねぇ、さっきから声かけてんだけど? この映像、何回見れば気が済むのよ」


 目の前の椅子に、偉そうに足を組んで座っていた人物がリモコンを操作し、映像を止めた。

 

「そろそろ現実を受け入れて、私の話を聞きなさいよ」

「すみません……失礼ですが、あなたは……?」


 辛うじて冷静を保ちながら、見知らぬ女に尋ねた。


「ん? どう見ても、女神じゃん?」

「……え? 女神?」

 

 女神って……ふざけてる場合じゃないだろ……。

 ただ、言われてみれば、確かに女神のような美貌ではある。

 月の光のような長い銀髪、澄んだ青色の瞳、天上の雲を紡いだ白いローブ。

 ただ、女神のような貫禄は一切ない。あと、態度が若干でかい。


「俺はここで何を? そもそも、ここはどこなんですか?」

「ここは天界。あんたは死んだの。映像でも散々言ってたでしょ?」


 その言葉で先程までの記憶が蘇ってきた。


 ◆


 世間に一般人との結婚発表をしてから一ヶ月が経ってもないこと。

 俺は定食屋で、奥さんと夕食を済ませ、港区の高級マンションへと歩いていた。ちなみに、「一般人」と公表はしたものの、果たして一般人と呼べるのか悩むほどに綺麗な人だ。

 

 そんな彼女が、俺の手を握り、顔を上げて見つめてきた。


「司くん」

「ん? どうした?」


 俺も自然と彼女を見て、小さな手を握り返す。


「子どもが欲しいの……司くんの子どもが」

「え……?」


 思いがけない言葉に、頭が一瞬停止した。

 子どもが欲しいなんて今まで言われたことがなかった。


「……いや、まだ早いよね」


 思わず表に出てしまった俺の戸惑いに気づき、彼女が小さく笑った。


「ううん、いいと思う。凄くいいと思うよ! 今すぐ作ろう! 帰ったら、すぐにでも妊活、始めよう!」


 焦って言葉が少し早くなった。それを聞いて彼女は照れくさそうに顔を赤らめて、


「アハハ! 今すぐは気が早いよ、司くん! でも……喜んでくれて良かった」

「うん、嬉しい。これからは時間あるから、二人で幸せな家庭を築いていこう」


 その瞬間、俺は確かに感じていた。

 これ以上ない幸せを。


 だが……その時。


――グサッ。


 俺は何者かに背後から刺された。

 

 不意に胸元に痛みが走り、思わず胸に手を当てた。すると、温かい血が(てのひら)にべっとりと。

 

「ん、どうしたの? って、え、なにこれっ、血? 司くん! ねぇ、司くんっ!!」


 着ていた白いシャツに赤い血が広がってることに彼女も気づいたようだ。

 

「大丈夫だ、とりあえず落ち着いて救急車を呼ぼう」と思ったが、なんと声が出ない。


(あれ……これ、なんかヤバいかも)

 

 胸の血は止まらず、体に力が入らない。俺はそのまま、フラつくように地面に崩れ落ちた。


「クソ野郎がッ!! ふざけやがってっ!!」


 彼女の声じゃない。怒りに満ちた、知らない女の声。

 だけど、振り向く力もなく、顔が見られない。

 意識が遠のいて、

 


 ――――そして、気づけば、ここにいた。

ブックマーク、いいね、☆☆☆☆☆等で応援していただけると嬉しいです!! とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ