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錯覚  作者: 菅原 こうへい
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「はい!みなさんおはようございます!」

「おはようございまーす」

 3年1組の教室に、倦怠感のような声と期待にあふれる声とが混じってできた挨拶が響いた。

「はい!今日から3年1組の担任を務めます……」

 担任の先生は、元気な声とともに自己紹介をしてくれた。見るからに若い男の先生で、どうやら3年生を担当するのは初めてなようだ。僕は3年生になったのだけれど、結局はいい成績を収め、ほかの人の見本になるような生活を送ればいいだけのことだから、対して変わらないだろうと考えている。高校も、あの有名な進学校に行けば誰も文句は言わないだろう。 

 そんなこんなでボーっとしていると、『あの時間』が訪れた。

「はい!それでは私の長話もここまでにして、これから役員決めをしたいと思いまーす」

ざわざわ…ざわざわ…

「まずは学級委員から!誰か、立候補する人はいませんか?」

……シーーン……

 来た。やっぱり来た。クラスメートは銃を突き付けられたかのように固まり、黙る。そう、誰も立候補しないのだ。

「誰でもいいですよー でも押しつけは嫌だから立候補がいいな」

担任も徐々に表情を曇らせる。この場にいる誰もが、早くこの時間が終わってほしいと願っている。無論、僕もだ。

 ………いったい何分時間が過ぎただろうか、いやまだ秒の世界の中か、ぼくは自然に耳が赤くなってくる、そして、例の幻聴が聞こえてくるのだ。

「おい○○。なんで手あげねーんだよ」

「おいおい早くしてくれよ」

「お前が何とかしろよ」

「はやく!」

「お前以外居ないから、もう潜伏はやめようぜ」

「お前のせいでこの変な空気が続くんだよ」

 お前のせいでこの変な空気が続くんだよ

 いつから始まったのかはわからない、自分でも時々何を考えているんだと嘲笑したくなる。しかし、ぼくはどうもあの空気になると、この世の中で私が絶対悪な存在なのだと痛感してしまうのだ。

 少しずつ息も上がってきた、もうこうなってしまうと、次に移す行動はたった一つだ。

「僕がやります」

「お!やってくれるのか、頼もしいな 名前は?」

「はい、す」

「もし」

「うわあ!?」

 青年は現実に戻ってきた。公園のベンチで一人だったはずの青年の前には、しゃがれた声の老人が立っていた。

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