スポット
とにかくどこかへ出かけて、面白い動画を撮りたくてたまらなかった。
僕達3人は、茅ヶ崎が親に買って貰った軽自動車に乗り込むと、あてもなく出発した。
隣県にあるという心霊スポットに行ってみようと言ったのは土井だったろうか。
彼は前々からそういうのに興味ありげだった。
僕も茅ヶ崎もノリで賛成し、隣県の、といってもそう遠くない、とある心霊スポットまで行った。
その場所は、ごくありふれた狭い県道を山の方に進んだ先にある。
僕達は、やがて道がガードレールで塞がれた場所に行き着いた。
通行止めになっていたんだ。
この時既に日は暮れていた。
僕達は車から降りると、ガードレールの向こう側を進みながらスマホで動画やら写真やらを撮りまくった。それから車に戻って撮ったものを見てみた。
でもそうそう怪奇現象が起こることなんて無く、真っ暗な中僕達の声が入っているだけの動画と、フラッシュで何とか雑草や路面が写っただけの写真しかなく、途端に馬鹿らしく思えてきたのだった。
みんな帰りたくなったが、何だかとても疲れて眠かった。
それで、車の中で眠ってしまった。
僕が目覚めた時には外は薄く明るかった。
外に出てみると、薄明るいのは曇っているせいだとわかった。朝には違いないだろうが、時間はよくわからない。腕時計を見ようとした時、後ろから足音が聞こえた。
「何しているんですか?」
それは茅ヶ崎でも土井でもない、小さな男の子だった。
ランドセルを背負っているから、小学生だろうと思った。
「幽霊を見に来たんですか?」
男の子はまた訊いてきた。
ここは割と有名なスポットだから、きっと僕達みたいなのがよく来ているんだろう。
地元民からしたら迷惑なのかもしれない。
僕はそう思うと何だか正直に答えられず、誤魔化すような笑みを浮かべた。
男の子は胡散臭げに僕の顔を見た。
「隠してもわかるのに」
そうか、こんな所に知らない人がいたら…崖崩れで大被害を受けて、廃村になった所に知らない人がいたら、そういう奴らだとしか思えないだろう。
幽霊と思われないだけましかもしれない。
そうだ、この子に、近くにコンビニがないか訊いてみよう。
そう思った時、急に寒気が襲って来た。思わず目を固く閉じた。すぐに開いた。が、男の子はいない。
それどころか、辺りは真っ暗だ。
「どうしたんだ?」
土井の声が近づいて来た。「随分奥まで行って…なんかあったか〜?」
おわり
読んで頂きありがとうございました。