4.呪いと女神
「そう、何を隠そう我こそが竜王イースその人であーる!!!」
※
「…あのー、竜王って何ですか?」
俺は素直な疑問をイースに投げ掛けた。
神様が存在して、俺自身も異世界からの転生者だ、巨竜が居ても何もおかしくない。
おかしくはないのだが…だからと言って初めてのエンカウントが竜王って何だよ。
本来なら『始まりの町』で初エンカウントはスライムじゃないのか?
何故俺は『竜王の城』で初エンカウントが竜王本人なんだよ!
発狂する俺を見つめてイースが、あははと笑う。
「ん?竜王とは竜王だぞ?全ての種族の頂点に君臨する巨竜の王と言うことだ。…まぁ、古の大戦で巨竜は我を含めて三体しか残っておらぬがな」
「三体っ!?…しかも竜王ってどんな奇跡的確率だよ!」
「その通りだ人間よ!我に会えるなんて正しく奇跡、ましてや命を救われるとは奇跡以上なのだぞ!!」
…そう言えば呪いとか浄化って?
命を救われたって、どこにも異常は無かったと思うけど。
「命を救ったって…俺はそんなにヤバイ状態だったのか?別に何も感じなかったけど。…そもそも一体誰が俺に呪いなんて?」
「貴様は違う世界の人間なので有ろう。差し詰め神々の放った刺客と言ったところか。…しかも、相当規格外のな。率直に言おう、我と出会わなければ貴様は自我を失い只この世界に生きるもの達を殺し続ける獣に成り果てるところだったのだぞ。…あの、性悪女神めが…っ」
…女神?
俺が会ったこと有る女神何て一人しかいない。
「…ローゲが俺に呪いをかけたって言うのか?あんなポンコツにそんな事が出来る筈無いだろ!!?だって、あいつまた俺に会えるのを楽しみにしてるって…そう言ってたんだぞ!」
「それが神と言うものだ。残酷でどこまでも利己的。貴様を操るのにはその関係が一番だと踏んでの態度だろうな。事実貴様にかかっていた呪いはあの女神の魔力で編まれていた。『翼を溶かす者』、悠久の時を過ごす我もここまで強力な呪いは初めて目にした」
『翼を溶かす者』?
違うと力強く否定したい…したいのに考えてしまう、深く深く考えてしまう。
「…俺の名前。翼って言うんだ。この名前はローゲしか知らない…っ」
イースは悲しいのか怒っているのか、よく分からない顔で腕を組んだ。
「…ふむ、貴様の名前を使ったのか。ますます趣味の悪いことだ。『翼を溶かす者』は先程言った通り、貴様を神々の兵器とするものだ。しかし、その本質は力を付けた貴様が神々に絶対逆らえないようにする事。もし逆らえば貴様の身体はドロドロに焼き溶かされる」
「っ…焼き溶かす。で…でも、もう呪いは消えたんだよな!?…イースが浄化してくれたんだろ?」
イースは人差し指を突き出した唇に当ててフーッと息を吹いた。
「流石の我でもここまで強力な呪いを完璧に浄化する事は出来なかった。…どちらかと言うと改変が正しいな。しかし、一つだけ問題がある」
「どんな問題何だ?」
竜王イースは無駄にデカイ胸を張って断言した。
「一週間後に貴様は死ぬ!!!」