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1.転生

初めまして柏木 暖簾と申します。

まずはこのお話に興味を持って下さった事にお礼を申し上げます。ありがとう!!

初めての執筆ですのでおぼつかないものと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。

それでは行ってらしゃいませ!!

 喉の奥がじりじりと焼ける様に痛む。真っ赤な景色に消えた君の名前を叫ぶ度に。

 「御影(ミカゲ)っ!!!」

       

       

       

       

 驚くべき事に俺は知らない天井と言う、良く見知ったシチュエーションに遭遇している。

 どうやらベットに寝そべっているらしい。

 「…病院?助かったのか…?」

 掌を顔の前にかざして確認する。

火傷が無い…?嫌、確かに此処には火傷があった筈だ。

 「困惑しているようですね。高橋(タカハシ) (ツバサ)君」

 そんな時優しい女性の声が俺に向けられた。

 反射的に声がした方向に視線を移すとそこには紫色の長髪、特徴的な赤い瞳、そしてシスターの様な格好をした美しい女性が歩いて来るのが見えた。

 「貴方には色々と伝えなければいけないことがありますね。まず此所は病院ではありません。…率直に言うと貴方は()()()死亡してしまいました。家が火事になったのです」

 「…………」

 死んだと言う言葉に多少のショックを受けたが、逆に喉に詰まったものが抜けた様な心地がした。

 「あら…もう少し動揺するかと思ったのですが」

 少し拍子抜けしたような表情をする女性に俺は言った。

 「あんなにリアルな夢は俺の頭じゃ生み出せないので、逆にしっくりしてるんです。…てことは貴女は神様か何かですか?」

 俺は言いながら体を起こしてベットに腰かけた。

 「自己紹介が遅れましたね。初めまして、私はローゲ。導きの女神ローゲと申します。()()貴方の転生を担当する事となった女神です。これからよろしくお願いしますね翼君!」

 女神ローゲは満面の笑みを浮かべた。

 ………。

 「転生って何ですか?…また日本人として産まれるって事でしょうか?」

 「残念ながら同じ生き物には転生できないルールなんですよ。つまり()()()()で人として生を受けた貴方はもう人間として転生出来ないんです」

 俺としてはもう一度人間として産まれたい。

 …理由はよく分からないがそうしなければいけない気がする。

 「どうしても人間に転生する事は出来ないんですか?」

 「はい、…と言いたいところですが翼君は実に幸運です。何と、少し前に転生に対しての規定が改変された処なんですっ!!貴方が産まれた世界と別の世界でなら人間として転生する事が出来ます!!」

 ローゲは興奮した様子でガッツポーズをする。

 「…別の世界?もっと詳しくお願い出来ますか」

 何を隠そう高橋翼こと俺はオタクである。

 しかも出来ればその事を悟られたくないタイプのオタクである。

 異世界転生なんて夢のような話ではあるが目の前に美女神がいる状況で小躍りは出来まい。

 冷静にここはクールにいくんだ俺!

 「…実は今話に出ている世界では《十三魔王(ラグナロク)》と呼ばれる十三人の魔王が存在し人々の生活を脅かしているのです。そのせいで人口は減る一方。…しかし天界のルールに縛られ人口を増やす事も叶いません。そこでルールを改変する案が可決されたのです」

 ローゲは悲しそうな顔で指を組みながら言った。

 …それなら何故異世界人である俺が転生する必要があるんだ?

 「だったら俺ではなくて現地の人々が優先して転生する権利を持つんじゃないですか?」

 「本来ならそうなるはずです。ですが…。ぶっちゃけ誰も転生したがらないんです!!そりゃあそうですよね!強力な力を保有した魔王が十三人も居る世界に転生したい()()()何ていませんよねぇ!!?」

 俺の肩をガシッと掴んだローゲはそのまま俺を前後に激しく揺らす。

 おぉっ!?

 どうやら()()を踏んでしまった様だ。

 ………。

 「ほ、ほら俺が…俺が転生しますからっ!!ねっ!だから落ち着いて下さい女神様ーぁっ!!!」

 俺はガクガク揺れながら叫んだ。

 




 「…先程はお見苦しい姿をお見せ致しました」

 頬を紅くしてもじもじと恥ずかしがるローゲを見て、俺の中の女神像が音をたてて崩れるのを感じた。

 …思ってたより神様って人間っぽいんだな。

 「首がとれかけただけなんで気にしないで下さい」

 「っ……!?翼君って意外と意地悪なんですね。」

 ローゲが頬を膨らませれば膨らませるほど女神でも女性でもない只の女の子にしか見えなくなってきた。

 何か今までの対応がアホらしく思えてきたな…。

 ため息を漏らしながら俺は言う。

 「それで俺の転生についての話しなんだが。俺だって()()()じゃない、魔王が闊歩する世界に転生なんて流石に怖いぞ?それともよくある設定みたいに何かチート能力でも貰えるのか?」

 「た、ため口ですか…」

 ローゲは苦笑いを浮かべ、わざとらしくこほんっと咳払いした。

 「ええ、勿論です。あわよくば()()()()()魔王を討伐…それが叶わなくとも優秀な血を継いだ人間の増加が本来の目的ですから」

 …貴方たち?

 俺以外にも異世界からの転生者は多く居るわけか。

 神たちの考える理想のシナリオとしては魔王の全滅、だとすると俺の他に十二人…いやもっと多い可能性もあるか。

 「ちなみにチート能力は俺が選べるのか?」

 「いいえ、能力はランダムで与えられます。しかしどれも強力な能力であることは保証しますよ」

 自分で能力が選べないのは残念だが神様が強力って言うのなら間違いなく破格の能力なのだろう。

 口元が緩むのを感じる、もう子供じゃないって言うのにワクワクが止まらない。

 「…分かった!俺にチート能力をくれ。魔王なんかぶっ飛ばしやるよっ!!」

 「翼君ならそう言うと思いましたよ!流石私の担当転生者ですね!」

 ローゲは嬉しそうに俺の手を握って、またもぶんぶんと上下に振った。

 気分がいいので俺も乗っておこう。

 「はははははは!」

 「うふふふふふ!」

 ……………。

 い、いつまでも続けるんだこの女神!?

 「め、女神様っ!?早いとこ能力を貰いたいんだが」

 「女神様何て他人行儀ですねー。ローゲでいいですよぉ!…って、そうでしたそうでした能力を授けないとですよね」

 ピタッと手を止めたローゲは俺にベットに伏せるように言った。

 「これで良いのか?何だか少し怖いな」

 「大丈夫ですよ。失敗したらボンッて爆発して輪廻の理から外れるだけなので!」

 手を合わせて頬に当てるローゲを見て驚愕した。

 嘘だろこの女神、ポンコツそうなのは薄々気づいていたが直前にそんな冗談普通言うか!?

 「いや、怖いよ!!冗談だったとしても異常に怖いから!?…じょ、冗談だよな?」

 「勿論冗談ですよ。さっきの仕返しですって!…しかしふざけては危険なことは本当ですので言う通りにしてくださいね」

 俺が小声で覚えてろよと口にすると、ローゲはにこやかに何ですかと返答してきた。

 「…何でもないです、ごめんなさい」

 「素直なのは美徳ですね。それでは張りきって儀式を始めさせてもらいますよ!」

 ローゲは俺の額に両手をかざした。

 おぉっ!?暖かい…いや、熱い。

 それもそのはず、俺の体はいつの間にかローゲの瞳の色と同じ炎に包まれている。

 「落ち着いて目を瞑って下さい。…そうです。そのままでお願いします」

 ローゲに言われたまま目を瞑った俺は真っ暗な空間に漂う感覚に襲われた。




 …しばらくして何故だか底まで落ちきったと言う確信を抱いた俺は、瞼をゆっくりと開いた。

 「…此所は?ローゲは何処に行ったんだ…」

 ローゲの名を叫ぶが返答はない。

 しかし、驚くことに俺の目の前にまるで空間を切り取ったように白い色をしたものが突然現れた。

 人?…シルエットからして女性だ。

 何だか懐かしい、忘れちゃいけない…忘れてちゃいけない人のような気がしてならない。

 君は誰と質問すると彼女は何かを訴えるように俺の手に触れた。

 「…君は」

 彼女の両手が俺の手を包んだ瞬間、真っ黒だった空間は真っ赤な景色に変わった。

 突如吹き出た炎は彼女だけを焼くように勢いを増し、当然のように彼女を焼き消した。

 だが俺の耳には彼女が消える前に口にした言葉がしっかりと残っていた。

 


「ずっと…待ってるから」


 つばさ…つばさくん、翼君っ!!

 俺は自分の名前を呼ぶ声に起こされた。

 「よかったぁー。翼君ったら儀式が終わってもしばらく目覚めなかったんですよ?本当に失敗しちゃったかなーって心配してたんです」

 そう言いながらティーカップ片手に高級そうな焼き菓子(クッキー)を頬張っているローゲに若干殺意が湧く。

 「お陰様で無事に生還しましたよ。…ところでローゲに聞きたい事があるんだが。実は儀式の最中におん…」

 俺の話を遮るようにパンッとローゲが手を鳴らした。

 「さあっ!無事に能力も手にいれた事ですし早速転生しちゃいましょうか。あそこの光の柱に入れば翼君の輝かしい、第二の人生の始まりですよ!!」

 「い、いやまだ俺自分の能力も知らないし。質問の途中…」

 呆気にとられる俺は半ば強引に背中を押され光の柱の前まで連れられた。

 何で急に急ぎだしたんだこいつ?

「お、おい。だから俺は質問がしたいんだが?」

 「駄目ですよ。翼君と楽しくお喋りしていたら思いの外時間を使ってしまいました。まだまだ後がつっかえているのでこれ以上翼君贔屓(びいき)するわけにはいけません。時は金なりです!能力はお楽しみって事で、自分で確かめてくださいね」

 まあ、確かに異世界からの転生者以外にもたくさんの人の対応をするわけだからな。

 ポンコツだなんて思ったけどやっぱりこれで神様なのだろう。

 何て俺が感心していると目の前に手が差し出される。

 「貴方の善き人生を願っています。ついでに魔王の討伐も」

 「少ししたら魔王を見事討伐した転生者の担当女神だって有名になるぜ」

 俺とローゲはお互いに笑い合う。

 「それでは勇敢な転生者翼よ、また会う日を心待にしています!!」

 ローゲが俺を光の柱に向かって強く押した。

 「俺もだよ!」

 俺はローゲに満面の笑みで返した。

 

 


  

 

最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!

何かしら反応を貰えると大変励みになりますので感想、アドバイス何でもお待ちしております。

それでは次回のお話でも会えることを心待にしています!

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