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社畜娘がリストラされて神様にスカウトされました

初めて文章初投稿です。


「はぁ~~。良いなぁ!チートスキルで好きなことやって暮らしていけるなんて天国だべ」


小説に視線を向けたままお茶の入ったグラスを口へと運ぶ。


起きて寝間着から着替えることもせずかろうじて洗顔を済ませてはいるが時刻はもう昼過ぎだ。

怠惰の権化のようではあるが数日前まで昨今ではあまり見ないほどのブラック企業ブラックもブラックど真っ黒漆黒の会社で身を分子レベルにまで粉にして働いていた社畜だった。

数日前までというのもこれまた近年では考えられない程の突然のリストラにあい現在失業中である。


そんな漆黒企業で休日返上、日夜関係なく働いていた為家には寝に帰るだけ食事は帰宅時間が12時を超えるなど日常茶飯事でコンビニで済ますのが常だったのだからしばしの堕落には目をつむって欲しいところだ。


『何だ?そんなにご希望ならあたしが叶えてあげよっか?』


「そんなパラダイスがあるなら行きたいなぁ~……って、え?」


どこからともなく聞こえた声に条件反射で返事をしたものの1人暮らし。

1Kの自宅には自分以外いないはず。

テレビかと思い顔をあげて見てみるも今日はテレビの電源もつけずにいたため真っ暗な画面にはキョロキョロと見渡す自分の顔しか映っていない。


『お~いこっちこっち!!』


こっちと言われたが聴覚では感じない。

今度はキョロキョロと部屋全体を見回してみる。


『こ・こ・だ・よ』


突然顔面の前に逆さの人の顔が現れる。


「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」


声にならず一瞬呼吸が止まった気がする。

一拍おいて盛大に後ろへと飛び上がりガサガサと後ずさる。


『あはははは!!超ビビってるぅ~マジウケるんですけどぉ~~』


そこに現れたのは人だ。女の人だ。

渋谷のギャルのような言葉遣いで手を叩いて大爆笑中の女人だ。


もう一度いうがここは一人暮らしをしている1Kの賃貸アパートだ。

同居人はいない。

ただ突然現れた女人に声も出せず目を白黒させている事しかできない。


『めんごめんご!でも超ナイスリアクションすぎるわぁ~テンアゲ⤴⤴』


確実に口調は渋谷ギャルのそれである。


「な……だ、だれ……」


もはや声帯も引きつっているのかか細い蚊の泣くような声しか出ない。

体もブルブル震えている。


『あぁ~~ごめんって。そんなに怯えなくても良くない?』


今までの爆笑はあまりに怯えてる姿をみてバツの悪い表情に変わる。

何か返答しようにも声が出てこず口は鯉の様にパクパクするばかりで役にたたない。

これ以上後ろに下がろうにも6畳の狭い部屋では壁が邪魔をしてこれ以上は距離がとれない。


『マジごめん!!ほんっとごめん!!何もしないから!!とりあえず話しよ??』


顔の前で拝むように手を合わせギュッと目をつむり謝っている姿を凝視する。

話し方は渋谷のギャルだが髪は白に近い金髪で肌は透けるように白い。

服は白い布が幾つものドレープを描く柔らかい布地のエンパイアドレスのようだ。

なんの反応を見せずにいるこちらを心配そうな顔でチラリと伺ってくる目は緑がかった青色。

まるでギリシャ神話にでも出てきそうな出で立ちだ。


「ぁ…あの…だれ…です…か?」


意を決してもう一度声を出して見る。

先程よりはなんとか声が出てるようだ。


『あ!あたし神様!!!』


声を掛けられ嬉しくなったのか満面の笑みで言い放つ。


「…………へ?」


言っていることが一ミリも一ミクロンも理解できず気の抜けた声が出た。

ポカンとしたまま見つめているとなおもニコニコと言葉を続ける。


『チートスキル持って好きなことして生きれる天国行きたいって言ってたからさぁ~あたしが叶えてあげよっかな~って思って!すごい驚かせちゃったからさぁ能力さらに追加サービスしちゃう!!』

 

確かに言ったチートスキルで好きなことやって暮らせるなんて天国だと。

独り言だが確かに言った。

ただそれは今流行りのファンタジー小説を読んだ感想だ。

そう物語、ファンタジー、SF、サイエンスフィクションの話だ。

全く思考停止した状態でただ摩訶不思議な事を言う対面の女人の美しい顔を見つめる。


『だ~か~ら~あたしがぁ~その願い叶えてあげるって話ぃ~』


当たり前の事をも何回も説明させないでよとでも言いたげだが全く当たり前ではない。

夢かとも思ったが社畜だったせいか3日で寝飽きてスッキリ目覚めて眠気など微塵も無い。

最悪気でも違ったかとも思うがそれならとことん違えば良いんじゃないかと思い始めた。


「ま、マジっスか…」


思わず正座してしまう。


『マジマジぃ~!!っていうかぁ~こっちこそお願いしたいって言うかぁ~。結構あっちこっちでさぁ技術者欲しがっててぇ~あたしが今営業っていうかぁ~そういうの担当してんだよねぇ~』


長い髪をほっそりとした白魚のような指でクルクルと弄びながら辟易とした顔で返す。


『あたし的にはぁ~そういうのマジ向いてないっつーかぁ…でも上神には逆らえないしぃ~しかも早く人材寄越せってせっついてくるし…はぁ~マジ卍』


「お、おぅふ…」


神様も大変なんだなと社畜だった自分と重ねて共感してしまう。


「た、大変ッスね…」


『あぁぁぁん!!!ユッキーわかってくれるぅ~ホントマジ勘弁なんだけどぉ~いくら神様って言ったてさぁ~誰でも彼でも連れていけないしさぁ~文句言うなら自分でやれっていうのぉ~』


一度吐き出してしまったらどんどん愚痴が溢れて来るようだ。

雪崩か土石流の如く愚痴が押し寄せる。

社畜仲間かと同情的な思考になりウンウンと赤べこのように相槌を打つ。

ただ先程フッと感じた違和感。


「ゆ、ユッキーって…」


とめどなく流れてた愚痴の流れがピタッととまりこちらをパチクリと瞬きしながら見る。


『え?だって名前織沢ゆきでしょ?だからユッキー』


またもや至極当たり前という風に返された。

何を隠そうたしかに織沢ゆきだが初対面で自己紹介をしあったわけではない。

こちらも神様としか名乗られてない。


『いちおう~あたしも神様だからねぇ~』


「こ、個人情報、プライバシー、コンプライアンス…」


神様相手に通じるのかどうなのかとも思うが。


『神様相手に無理言わないでよぉ~勝手に見えちゃってんだってぇ~』


個人情報ダダ漏れとか酷い話だ。

裸で街を歩いているようなものだ。


『織沢ゆき(オリサワユキ)9月29日生まれ地球日本東北地方生まれの23歳。

18歳で上京してブラック企業就職。元彼は』


「もう良いです!!!!大丈夫です!!!」


大きな声で神様の声をかき消す。

まさかそんな個人情報までもがダダ漏れなのかと絶望にうちひしがれる。

ただそうなるとやはり本当に神様ということなのか。

今まで神様という事を信じるも信じないも深く考えずにいたがきっと本当なのだろう。

人間離れした美しい微笑みを浮かべた顔を見つめながらそう理解した。

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