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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第五章 変わる日々
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だれ?


 ◇◇◇


 お洋服1枚で寒かったから、包み込まれるような暖かい感触に、つい眠ってしまったのですが、まだまだねぶそくです。

 気が付いたら真っ白な部屋の中のベッドに、寝ていました。

 奥に扉があって、あと、なにかテーブルみたいなものが置いてある以外には、なにもありません。

 きみのわるい部屋です。


「お目覚めですか」


 はっと、見ると、黒い影の人が立っていました。

 部屋の中には、マアトとその人しかいません。

 黒い羽が生えていて、背の高い人です。


「誰?」

「私は、ベイル」

「ベイル……」


 ぼんやりした目で見ても誰だかわからないです。

 声はやさしそうに聞こえました。

 なんだか、眠い。 


「どうしてマアトはここにいるの?」

「私がお連れしました」

「マアトをどうするの?」

「少しお調べするだけです。私は、何もしません。むしろ、あなたは、する側だ。していただきたい」


 していただき、たい?

 なにを?

 マアトが、なにをするの?


 わからなくて、必死に考えました。

 すると、かちり、と神様が与えてくれたみたいに、ここ数日の記憶があふれて、この人の望みがわかってしまいました。

 目がぱっと覚めました。


「へ、へ、ヘンタイさんだああああ!」


 両手で身体をまもって、距離をとります。


「ち、違いますっ、していただきたいというのは、決してそういう意味ではなく」


 まただ。

 またです。言い訳がはじまりました。

 きっとこの人も、ヘンタイさんです。

 へんたいは、怖いです。

 どうして、おとうさん以外の男の人は、みんなへんたいなんでしょうか。

 いなくなればいいのに。


「ええと、どう言えば納得していただけるのか……ああ、そうではなく、いや、申し訳、ありませんでした」


 謝る姿にマアトはなんだか不思議な心地がしました。

 あれ?

 なんだか、この人、おとうさんに似てる感じがします。

 マアトは、このとき、初めてその人の目を覗き込んでみました。

 ……優しい目をしていた気がします。


「おや、てこずっておられますね、ベイル様」

「カーネル」


 ぎい、と音がして、また違う人が扉から入ってきました。

 知らない人です。白い服を着ていました。


「あなたひとりでは、子供の相手は辛いでしょう? 結婚されたこともないのですからね」

「兄弟は、おります。一人でもどうにでもなります」

「強がりばかりですな、あなたは」


 なんだろう。この人たち。

 そんなに、怖くない気がする。

 黒い人がマアトに言いました。


「どうか、あなたの使命を思い出してください」

「おもい、だす?」

「ええ。すこしずつでもいいので、時間をかけて。あなたの使命、為すべきことを」


 使命って、なんでしょう?

 おしごと?

 でも、それならマアトは、もうしています。

 おとうさんと、おかあさんのお手伝いをして、それで――


 でも。

 眠いです。今は、寝ていたい。


「眠いのでしたら、眠っていいですよ。また、起きたら、お話してくださいますか?」

「うん……」


 マアトは、みんなで、いい夢を見られたらいいな、なんて、思いました。


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