だれ?
◇◇◇
お洋服1枚で寒かったから、包み込まれるような暖かい感触に、つい眠ってしまったのですが、まだまだねぶそくです。
気が付いたら真っ白な部屋の中のベッドに、寝ていました。
奥に扉があって、あと、なにかテーブルみたいなものが置いてある以外には、なにもありません。
きみのわるい部屋です。
「お目覚めですか」
はっと、見ると、黒い影の人が立っていました。
部屋の中には、マアトとその人しかいません。
黒い羽が生えていて、背の高い人です。
「誰?」
「私は、ベイル」
「ベイル……」
ぼんやりした目で見ても誰だかわからないです。
声はやさしそうに聞こえました。
なんだか、眠い。
「どうしてマアトはここにいるの?」
「私がお連れしました」
「マアトをどうするの?」
「少しお調べするだけです。私は、何もしません。むしろ、あなたは、する側だ。していただきたい」
していただき、たい?
なにを?
マアトが、なにをするの?
わからなくて、必死に考えました。
すると、かちり、と神様が与えてくれたみたいに、ここ数日の記憶があふれて、この人の望みがわかってしまいました。
目がぱっと覚めました。
「へ、へ、ヘンタイさんだああああ!」
両手で身体をまもって、距離をとります。
「ち、違いますっ、していただきたいというのは、決してそういう意味ではなく」
まただ。
またです。言い訳がはじまりました。
きっとこの人も、ヘンタイさんです。
へんたいは、怖いです。
どうして、おとうさん以外の男の人は、みんなへんたいなんでしょうか。
いなくなればいいのに。
「ええと、どう言えば納得していただけるのか……ああ、そうではなく、いや、申し訳、ありませんでした」
謝る姿にマアトはなんだか不思議な心地がしました。
あれ?
なんだか、この人、おとうさんに似てる感じがします。
マアトは、このとき、初めてその人の目を覗き込んでみました。
……優しい目をしていた気がします。
「おや、てこずっておられますね、ベイル様」
「カーネル」
ぎい、と音がして、また違う人が扉から入ってきました。
知らない人です。白い服を着ていました。
「あなたひとりでは、子供の相手は辛いでしょう? 結婚されたこともないのですからね」
「兄弟は、おります。一人でもどうにでもなります」
「強がりばかりですな、あなたは」
なんだろう。この人たち。
そんなに、怖くない気がする。
黒い人がマアトに言いました。
「どうか、あなたの使命を思い出してください」
「おもい、だす?」
「ええ。すこしずつでもいいので、時間をかけて。あなたの使命、為すべきことを」
使命って、なんでしょう?
おしごと?
でも、それならマアトは、もうしています。
おとうさんと、おかあさんのお手伝いをして、それで――
でも。
眠いです。今は、寝ていたい。
「眠いのでしたら、眠っていいですよ。また、起きたら、お話してくださいますか?」
「うん……」
マアトは、みんなで、いい夢を見られたらいいな、なんて、思いました。




