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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第五章 変わる日々
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無垢なる森の破壊王


 ◇◇◇


 視界の端に黒い影がもそりと動いていた。


「……でかいなあ」


 影は、ワニ? だった。

 トカゲのような風貌で、ワニのような大きな口。

 

 俺が知る世界最大の爬虫類は、コモドドラゴンだが、黒鱗のそいつは、その上をいく。

 目視でしかないが、体長が8メートルはある。


 その大きさは規格外。

 コモドドラゴンを中南米の奥地に1000年くらい放ったらかしにして、久々に様子を見に行ってみたら、おまえでっかくなっちゃったなあ、という感じ。

 そいつに気づいているのは俺だけで、闖入者の方も、まだこちらに気づくことなく、あらぬ方向を見上げていた。


(小鳥?)


 ワニがじっと見上げる先には立派な大樹があり、その幹には小鳥が止まっている。

 あの鳥は、向こうの方角から飛んできて、さっき、樹に止まったやつだ。


(――逃げて、きたのか?)


 ワニは樹の周りをうろうろしていて、時折、切なそうに「きゅおおおん」と鳴いていた。

 巨体に似合わず声が可愛かった。

 おいおい、熱烈なラブコールじゃないか。

 可哀相だから、降りてきてやれよ小鳥さん。


 まあ、飛べる小鳥を、飛べないワニが追いかけても、捕まえられるはずがないな。

 ……と思っていたのだが。


 ワニが、ほんの軽く樹に触れると、樹が大きく揺れた。

 助走も何もない、ただの突進。大して攻撃する意思がなかったことは、様子でわかる。

 さすがにフランさんも異変に気づいた。


「まだ魔物が残ってたの? なら、あたしが倒……!?」

「ええ、あそこですよ」

「あ、あ、あ、あ、あいちゅ、もりのはかいおう【グランドグリゲーター】にゃあ!?? にゃ、にゃ、にゃんで、こんにゃとこりょににに!?」


 さっぱりわからん。

 辛うじて聞き取れた【グランドグリゲーター】とかいう単語は、聞いたような気もするが。


「に、逃げるにゃ、逃げるにゃ、逃げるにゃ!」

「なに言ってるんです」


 フランさんが慌てて、後退りしようとしているが、尻餅をついているフランさんは全く動けていない。

 指だけわさわさしたところで、動けないでしょうね。


 さて。

 木の上を再度見上げたワニが、今度は、助走をつけて突撃した。

 大してスピードも乗っていない。

 樹に弾かれて、おしまいだろう。普通なら。



 どおおおおおおおん!!



 ワニが、体当たりした途端、大樹は2、3度大きく揺れて、地面からぼこりと、勢いよく抜け出てきた。

 地面が大きく揺れた。樹が倒れる。ぎゃあぎゃあ、と大勢の生き物が逃げていった。


 鳥の方は、と。


 樹を根元から薙ぎ倒されるとは思っていなかったらしく、地面に降り立った自分に驚愕していた。

 こういうのって、言葉が通じなくても、通じるもんなんだな。


 小鳥にぬっ、と大きな影が落ちた。

 ワニだ。


「きゅおおおおおお♪」


 ワニが可愛く小鳥にじゃれつく。

 捕獲、完了。

 ぴきゅーーー、とこちらもぱたぱた暴れて可愛い悲鳴を上げていたが、数秒でその声も聞こえなくなった。

 

「すげぇ、すげぇよぉ。聞いた以上だよお」

「なにびびってるんですか」

「あ、あれ見て正気でいられるほうがおかしくない?」

「ちょっと大声出してみてもいいですか」

「え゛っ?」


 フランさんが固まった。

 どうも、俺にはあいつを脅威と感じないんだよな。悪意も感じられないし。


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