追加クエスト~乱入、大型モンスター~
◇◇◇
ネズミが動かなくなって、正気に戻ったフランさんが上機嫌で俺に話し掛けてくる。
「いやー。満足まんぞく」
「そりゃ、あれだけ大暴れすれば満足でしょう。で、サーシャさんは、なにをしてるんです」
サーシャさんの足元には、眠ったように動かないネズミたち。
彼女が倒したものは、まだ生きているようだ。
「【イビルラット】は尻尾を斬られると大人しくなるの。殺すのは、可哀相だから」
「眠らせただけなんですか?」
「……うん」
サーシャさんが少しバツが悪そうに言った。
討伐のクエストだしな。倒さないと、成功にはならないかもしれない。
「まー、いいよ。今のあたしは寛大だからニャ、雑種などどうでもよい」
「そうですね、大人しくなるなら、いいんじゃないですか」
「……ありがとう」
同意を得た彼女は、ネズミの尻尾をちょっとだけ切って、森に逃がしていた。
優しい顔だな、と思った。
「お、おとーさん」
くいくい、と俺の服の裾を引っ張るやつがいる。
「なんだい、マアト」
「お、おしっこ……」
もじもじしたマアトが俺に伝えてきた。
小便? 困ったな。
「街まで我慢できないか?」
「も、もれちゃう」
別に漏らしてもいいんじゃないか、と言いそうになったが、ぐっと飲み込んだ。
「あ、えっと。じゃあ、私が――」
「お願いできます?」
目の合ったサーシャさんが、自然とマアトを連れていき、木々の向こうに消えていった。
「大変だねー。おとうさんは」
「そうでもないですよ」
静まり返る森。フランさんと二人。
猫の人の、特徴的な耳と尻尾は、風にゆらゆら揺れている。
きれいだな、と思った。
なにか、聞きたいことでもあったかな。
俺は意を決して、
「ひとつフランさんに聞きたいことが――」
そこに、タイミングよく、がさり、と、現われた闖入者がいた。
黒い鱗を持つ、もっと巨大で無粋なやつが。




