前哨戦、キノコ狩り
◇◇◇
まずひとつ目の仕事は、フランさんが選んだクエストだ。
森に入って【デルエ・キノコ】という、キノコを採取する仕事。
サーシャさんに聞いたところによれば、特徴的な形をしているのですぐわかるらしいが……
鬱蒼とした森の木々に、陽光が反射して、影を照らす。
その影のふもとに、目的の物が土に埋まっていた。
「……なるほど。サーシャさんが、言い辛そうにしてたわけだ」
天をも衝かぬとばかりに起立する房。
房の先端は搾まっており、下部には丸みを帯びた傘が、左右対称に2つついていて、そこから房そのものが生えている。
ほんのり黒光りするキノコ。
しかも、これ。
「白い液が出てくる……」
ねばねばした液が先端から少しずつ垂れてきて、キノコと俺の手を濡らす。
ちょっと力強く、ぎゅ、と掴むと、先っぽから、中に詰まっている白い液が噴射する。
どう見ても、神が悪戯で作ったとしか思えない。
どうしよう。
これを、女性陣に回収させるのは……なんというか、いろいろ問題がありそうな気がする。
「もし嫌だったら、俺一人で回収してもいいんですけど」
「う、ううん。ちゃんと、やるよ。ルドにだけやらせる、なんて、そのほうが、嫌、だから」
「サッちん、あんま気にしないほうがいいよ? 無機物だからさー」
「う、うん。そうだ、ね」
サーシャさんは恥ずかしそうにしながら。
フランさんは気にしてないのか、笑いながら。
二人とも、手を、真白く、ぬるぬるべとべとにさせながら、キノコを回収していた。
ああ、これは、マアトに回収させたらアカン。
ふと見れば、視界の端で、彼女は、「うぇぇ……」とか言いながらも頑張って手伝っている。
これが終わったら、温泉に入ろうな、うん。
全員の手が白くなり、キノコを回収し終えるころには、結構いい時間が経っていた。




