夜の朝
◇◇◇
朝食を食べ終えた俺たち4人は、ギルドに向かう。
清々しい朝の光を受けた街は、わずかに昨晩の傷跡が残る姿を映している。
屋根を修理する人。汚れた壁を洗い流す職人。奇跡的に道に残っていた虫を、ホウキで掃いている人もいた。
「ルドは、料理人なの?」
行き交う通行人の脇を通り抜けながら、取り留めのない話をしていると、サーシャさんが尋ねて来た。
「急に、なんです?」
「だって、すごく様になってたし」
「そうそう! なんか手慣れた感じだった。あんな技術、どこで習ったのかにゃ?」
耳を立てたフランさんも首を突っ込んでくる。
ちょっと、顔が近くないですかね。
「ネットの料理サイトか何かで見ただけですよ」
「ねっと?」
サーシャさんたちが、揃って疑問符を浮かべた。
「ネットですよ、インターネット。今のご時世、山奥の村だって回線くらい繋がってるでしょ」
「……ごめん。なにを言ってるのか、よくわからない」
「嘘でしょ? マジですか」
「その、いんたーねっと、って どういうものなの?」
ネットがどういうものか、か。
辞書風に言えば『プラットフォームを介しサーバーにアクセス、管理、接続された端末と繋がる仮想世界』と言ったところだろうが、コンピュータの苦手な人にその説明をしても伝わらない気がするし、彼女が求めているのはそういう説明ではないと思う。
「そうですね、なんでもできるもの、ですかね」
「なんでも?」
「離れたところから話ができたり、手紙を送ったり」
「すごい。それって、魔術、みたいなもの?」
「魔術は限られた人しか使えないでしょ。ネットは、誰でも使えますよ。音楽を聴く、絵を描く、ゲームで遊ぶ。知らないことを調べたりもできます。ネットで調べれば、どんなことでもわかりますよ」
「どんな、ことも……」
「興味ありますか」
「……すこし」
「じゃあ、そのうち、機会があれば教えてあげますよ」
「ほんと?」
「ええ」
手取り足取り。
まあ、この辺にネット環境はないだろうから、元の世界に戻ったら、ってことになるか。
――戻りたいのか?
――さあな。
「……ちょっと信じられないニャア。なんでもできるって、うそくさい」
「なんですフランさん。その疑いの視線は」
「だって、疑ってるもの」
俺、嘘は言ってないんだけど。信用の問題なのか?




