変わらぬ朝に金の魚を①
◇◇◇
「おとーさん、どうしたの?」
マアトが起き抜けに、俺にべったりくっ付いて、俺の様子を気遣ってくれる。
俺は笑って答えてやった。
「別に、どうもしないよ」
「ほんと? おとーさん、ちょっと、抜けてるところが、あるから、しんぱいなの」
なにを生意気言ってるんだか。
心配なのは、お前の方だと思うんだけどな。
「マアトは、元気か?」
「うん! げんきだよ!」
「魔力を使い過ぎたって聞いたぞ。あまり無茶するなよ」
「う、うん。ごめんなさい、おとーさん」
マアトの頭をぽんぽんと撫でていると、怪訝な顔で俺を見ているサーシャさんと目があった。
部屋の外から香ばしい香りがする。ふむ、今日は魚料理か。
「そういや、フランさんは?」
「あっち」
壁際でスヤスヤとまだ眠っている獣人のフランさん。
なんだか、いたずら心が沸いたので、近づいて、蹴っ飛ばした。
「ふにゃ!? 今、なにかに蹴られたにゃ!?」
「おはようございます、フランさん。ご機嫌いかがですか?」
「あ、おはようおにーさん。あのさ、今、誰かが」
「それよりも、今日の朝は焼き魚みたいですよ」
ネコの顔が、嬉しそうに一瞬でほころんだ。
「おかみさん、約束を守ってくれたんだにゃー」
「よだれ、出てます」
「じゅる。失礼」
しかし、魚か。
「あの、ルド? どこへ」
「ちょっと厨房へ。用事があるんで」
部屋を出ると、後ろから追いかけてくるサーシャさんとマアト、フランさんの声。
彼女たちも、ぞろぞろと着いてくるつもりらしい。
一人で充分なんだけど、まあ、好きにすればいいさ。
何をしていなくても腹は減る。
今日の戦に行く前に、極上の料理で腹ごしらえをしよう。




