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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第四章 戦いは唐突に
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激しい戦闘と書いて、やつ。


 ◇◇◇


「うらぁぁぁっ」

「【ファイア】! 【ファイア】! 【ファイア】! はぁ、はぁ、はぁ」

「魔術の質が落ちてんぞ!」

「うっさい! あんたも手を動かせ!」


 冒険者たちは相変わらず元気だが、疲労はすさまじいようだった。

 斬って、叩いて、撃ち落とす。

 その繰り返しが無限に続いて、精神的にも消耗しているのだろう。


 後衛の、俺たちが相手をする虫も増えてきている。

 取りこぼしが多くなっているのだ。


(くそっ、またきたか!)


 前線を抜けた一匹の虫が、勢いよく突撃してくる。

 狙いは、側にいるマアト。


 彼女も、俺も、サーシャさんでさえも、突然の事態に、反応できない。

 そのとき、近くにいた女性が、マアトをかばって呪文を唱えた。


「聖なる壁よ、守れ! 【リフレクト】!」


 薄い光の幕が展開されて、きぃいん、と虫の突撃を弾く。


「【シャインアロー】」


 弾かれた虫を、そのまま光の矢が追尾する。ざくっ、と肉を斬る音がして、虫は息絶えた。


「マアトちゃん、だいじょうぶ?」

「う、うん。ありが、とう」


 展開された光が、消えうせる。

 マアトがそれらを、興味深そうに見ていた。


「ごめんね。他の人のサポートに行かないと。危ないと思ったら、街まで逃げて。誰もキミ達を攻めないから」


 女性が他の人のところに走っていった。

 逃げろだって?


 スプレーは効果がある。

 虫は逃げていく。だが逃げた虫は、誰かの元にいくから、誰かが対応しなければ数は減らない。

 この状況では、意味が薄かった。


(……俺がいる意味、なくない?)


 それは、ずっと思っていて、考えないようにしていたことだ。

 頭を振る。

 

 短剣を抜いて斬りつけても、素早い虫を相手に、俺の腕じゃ当てられない。

 サーシャさんが素手で虫をぱんっ、と叩き落していた。


 打撃ならいけるかもしれない。

 両手で角材を握る。

 面積が広いこっちの方がまだ当てられる。


 ぶんっ。

 ばちっ。


 武器を振るって、虫をがむしゃらに叩き落す。

 柔らかく肉厚なものを叩く、嫌な感触が伝わった。


 小1時間ほど、それを延々と続けた。

 時間の感覚があまりない。握力がしびれて、何も持てなくなる。

 もう、限界だった。


 けれど、虫の方もさすがに打ち止めだったらしい。

 いつの間にか、団体様は途切れ途切れになり、隠れていた夜の月が姿をあらわす。


「ふんばれ! もう少しだ!」


 鼓舞の声が聞こえる。

 俺も、みんなも、ヘトヘトになりながら、気力を振り絞った。


「よくやったな」


 気づけば空は元の色を取り戻していた。

 


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