表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第四章 戦いは唐突に
52/96

トラブルTHEじゃがいも


 ◇◇◇


 さあ、これから緊急クエストとやらを始めるぞ、と意気込んだところで、俺たちは、受付のおねえさんに呼び出されていた。

 そこで、衝撃の一言。


「いま、なんと?」

「ですから! 緊急クエストは受注できないんですよ、あなたは」

「どうしてですか?」

「登録するときに説明したでしょう。あなた、ステータスが『不明』のままですよね? 不明だと、緊急クエストは受けられません」


 そういえば、そんなこと言ってた……ような。


「【姿見の宝珠】でしたっけ」

「そうです。ちなみに、ですけど、今しがたも試しました」

「測れなかったんですか」

「測れませんでした」


 誰だろう、こんなシステム考えたのは。

 余計なことしてくれちゃって、もう。


「なにを騒いでおる?」

「あ、これは……ギルド長。こちらの方々が、緊急クエストの参加条件を満たしていなくて」


 声に気づくと、さっき演説していたじいさんがいた。

 今は一人で、お付きの人はいない。

 じいさんも俺を認めると、上から下へ、ずいと視線を這わす。

 ……なんだか、見定められている?


「ふむ、ぬしがくだんの少年か。

話は聞いておるよ。なんでも、記憶が無いのだとか」


 記憶が無い?

 そんな話になってるのか?

 じいさんは、受付のおねえさんに、


「特例として認めてあげんさい。

わしの権限でな。今は、あらゆる助けが必要なときじゃ」


 と言った。


「……ギルド長が、そうおっしゃるのでしたら」

「うむ。少年、正しく歩みたまえよ」


 かっかっかと笑いながらどこかへ行くじいさん。

 きっとあの人、先の副将軍とかだな。



 ◇◇◇



 妙に気の合うフランさんとは、別行動になった。

 クエストが無事に終わったら、例の宿で落ち合う約束をした。


 彼女は「あたし、このクエストが終わったら、おさかなを食べるんだ……」とかちょっとフラグな感じのセリフを口にしていた。

 そういや宿のおばさんはどうしてるかな。遅くなるって伝えた方がよかっただろうか。


 外に出ると、ひんやりと空気が冷たい。

 月明かりと、ぼんやり光る薄明りだけが街を照らしている。

 昼とは異なり、静まり帰る街は、恐ろしく感じる反面、美しいとも思う。

 これから前線の人たちに物資を届けに行くことになった。


 荷台にいっぱいの補給物資をカラカラ押しながら、目的の合流地点まで向かう。


「う、ん?」


 背中のマアトがぶるっ、と奮えて身じろぐ。


「おはよう」

「おとーさん」


 ぎゅっと、しがみついてきた。


「動き辛いよ?」

「マアトは、らくちんだもん」


 嬉しそうにそんなこと言ってくる。

 こんないい子を見捨てるなんて、この子の両親は何を考えてるのだろう。


「忘れないうちに、これ、渡しておくね」


 サーシャさんが、透明な液体の入った、小さなビンを俺に渡す。

 

「なんですか、これ」

「虫除けスプレーだよ。わたしが調合したの。たぶん、効くと思うから」


 サーシャさんはマアトにも、ビンを渡していた。

 彼女は、たぶん何に使うのかわかってないだろうけど、無邪気に喜んでいた。

 

「きれい」

「【月見草のしずく】を使ってあるの。虫が嫌うんだよ」

「へぇ」


 重たい荷台をサーシャさんとふたりで協力して運ぶ。マアトも手伝ってくれた。

 途中、見回りをしている三人のの冒険者たちと出会った。


『さっきの見てたよ。Cランク相手に災難だったね』

『それ、物資? 重いでしょ?』

『魔物の残党がいたら俺たちに知らせろよな』


 一言二言話して、別れた。

 彼らも割り振られた仕事を懸命にこなしている。俺も頑張らないとな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ