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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第四章 戦いは唐突に
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ギルドとちんぴら①


 ◇◇◇


 ぬっ、と因縁をつけてきたのは、体格のいい男だった。

 冒険者というより、どこにでもいそうなチンピラという感じだ。

 その男は、俺、というより、サーシャさんと俺の背にいるマアト、が気に入らないようだった。


「じゃがいも戦士がいたら、なに?」

「なんだと?」

「きみに、迷惑をかけたの?」


 サーシャさんが変わりなく、いつもより冷静に? 男をいなした。

 その男はカッと激怒した。


「イモみてぇな顔しやがって! くさくて、たまらねえんだよ!」

「? わたし、へんな匂いする?」


 くんくん、と自分で匂っているサーシャさん。

 いえ、いい匂いです。

 その様を、俺は可愛いと思ったけど、男はバカにされたと取ったようで、


「ふざけてんのか!? 緊急クエストなんだぞ! 遊びじゃねえんだよ!」


 大声を上げた。

 何事か、と周りの注目を嫌でも集めてしまう。

 奇異の視線にさらされる俺たち。

 背中のマアトは、そんなの知ったことかと安らかに寝ていた。少しうらやましかった。


「子供は帰ってママのオッパイでも吸ってろ!」

「ママは、死んだ。ずいぶん、昔に」

「……」


 男は少し面食らった。が、すぐに調子を取り戻した。


「い、いや、だが。子供に参加されちゃ迷惑だ」

「迷惑は、かけない」

「じゃがいも戦士の出る幕はねぇって言ってるんだ! おまえらも、そう思うよなあっ」


 周囲に向けて同意を求めていた。

 そこに。


「まーまー。怒らない怒らない」

「なんでぇ、テメェは」


 いなくなったはずのさんが現われて仲裁に入ってくれた。

 いや。

 今の騒動で俺たちを見つけた、という方が正しそうだけど。


「フランと言います。ここはあたしに免じて、仲良くして欲しいですにゃ」


 フランさんの尻尾と耳が、ぴこぴこと動いて、場を和ませた。

 だが、男はそう思わなかったようだ。


「……ふん。てめぇ、ランクはいくつだ?」


 にこにこしていたフランさんの表情が、その言葉に、ぴたっと凍りつく。


「俺は、Cランクだ。てめぇは……なんだ、Eランクじゃねぇか。だったらよ、先輩に払う敬意ってモンがあるよなぁ?」


「……」

「どうした? 俺より格下のネコちゃんよ。まずは頭を下げて挨拶してみろや」


 乱暴な男だった。

 周りは見てみぬ振りをするばかりで、誰も関りあいになろうとしない。

 ぷるぷると震えているフランさん。

 それに気づいていない男。


「黙ってりゃあ、なかなかイイ女じゃねーか。どうだ? おまえ、俺の女にならねーか?」


 男がいやらしくフランさんのお尻を撫でた。

 刹那、フランさんが爆発した。


「フザケルニャ」

「!?」


 どかんっ☆


「~~~~~~!!!」

 

 すべてが、スローモーションに見えた。

 なんだか下半身が、きゅっと締まる感じがした。

 男が悶絶する。

 フランさんが引き締まった右足で、男の金的を、思いっきり蹴り上げていた。


「こ、こ、このアマっ! なんてこと、しやがるっ」


 男はぴょんぴょん飛び跳ねながら凄む。フランさんが負けじと言い返した。

 

「べーっ! おまえなんか、だいきらいだ!」

「このやろう!」


 ガッとフランさんに殴りかかろうとする男。

 息を呑んだ。


 そこに、身体をひねらせたサーシャさんが目にも止まらぬ早さで割って入った。

 合気道の達人がぽんぽん投げ飛ばすみたいに、怪我しない程度に、男を回し投げる。


「がはっ」


 どてっ、と地面に叩きつけられる男。


「乱暴は、だめ」

「ブッコロス!」


 目が完全に据わった男は、銀に光るナイフを引き抜いた。

 その事態に周りの人たちの顔色も強張った。

 あれは、マズイ!


「いい加減にしてください!」


 さすがに止めるしかないと思ったところで、俺たちの様子を見ていたのだろう。

 お馴染みの、ギルドのおねえさんが叫んだ。



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