街の美化運動
◇◇◇
たくさんの人がまぶしそうに目を細めて歩く中、俺たちは地面と格闘している。
街に戻った俺たちは、今日もサーシャさんのクエストに4人で協力することになった。
彼女の受けたクエストは『街をきれいにする』という何ともアレな依頼だ。
具体的には、落ちてるゴミを拾ったり、木々を植えたり、街の人にわかってもらえるようにポスターを貼ったりする。
受付のおねえさんが言ってたことがなんとなくわかってきた。
こんな仕事、ふつうの冒険者は、やりたがらない。
ちなみに依頼主は街の市長になっていた。
「思ってるより、多いんだよ。大変だから、気をつけてね」
「はい」
「ゴミ拾いなんて、ひさしぶり。ちょっと楽しみかなー」
「がんばるー!」
ギルドから掃除用具を借りてきてくれたサーシャさんの号令で、みんなが動き始めた。
街はゴミって少ないのかなと思ってたけど、改めて見てみると、結構、落ちてる。
若い冒険者の男が、パンの包み紙をぽい、と無造作に捨てていた。
……なるほど、ああやって増えていくわけだ。
塵つも、ってやつか。
紙くず、木の端材、小さな鉄くず、土の塊。
意味の無いことな気もしたけど、誰かがやらなければ、増えるばかりだ。
「誰にゃ! マタタビを捨てたのは! こんな素晴らしい御方は もっと殖えろ!」
フランさんは拾った枝切れをフンフン嗅いでいる。
通りがかった街の人が、叫ぶフランさんを避けて歩いていった。
……あの人は、よくわからないな。
サーシャさんが、マアトの面倒を見ながら、一緒にゴミを拾っていた。
俺も黙々と拾う。
街には、乾いた土の塊が いっぱい落ちていた。
特に建物の窓の下にあることが多い。
それを素手で拾って、かごに投げ入れる。
「あ、」
「え? なんですか?」
「う、ううん。なんでも、ないよ。その、あとで、ちゃんと手を洗ってね?」
サーシャさんは、言い噤んだ。
視界の端では、マアトが俺と同じように屈んで土を拾おうとしている。
サーシャさんが駆けていった。マアトがきょとんとしている。
「なぁに、おかーさん?」
「その……て、手袋をしようね」
まあ、素手で触るのはよくないな。
俺も手袋をはめて、ぽいぽいと拾っていく。
4人で協力したおかげか、ゴミ拾いは、そこまで手間取らなかった。




